ヤクルトの村上宗隆内野手の神懸かり的な活躍が続く。史上最年少のホームラン50号到達、王貞治(巨人)に並ぶ日本人選手のシーズン最多55本塁打、そして史上最年少の三冠王へと突き進む。

 昨季はチームを日本一に導き、MVPに輝いた。東京五輪でも決勝の米国戦で本塁打を放つなど金メダルに貢献し、日本球界では22歳にして打者の頂点を極めた観がある。

 早期のMLB挑戦への期待が高まるものの、海外フリーエージェント(FA)権取得は早くても2027年オフ。ポスティングシステムによる移籍は、25歳未満ならMLBでは「外国人のアマチュア選手」扱いとなり、契約に大きな制限を受ける。来季からの3シーズンはヤクルトでのプレーが確実視されている中で、複数の球界関係者からは「目標喪失」に懸念の声が出ている。

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村上宗隆は史上最年少の三冠へ突き進む ©時事通信社

日本で成すべきことは成した

 村上が今季55本塁打を放った翌日、米大手マネジメント会社のベテラン代理人がこう言った。

「三冠王は確実。これで(バレンティンのヤクルト時代のプロ野球記録の)60を更新すれば、日本で成すべきことはすべて成したことになる。選手の成長だけを考えれば、来季からでもメジャーに行ったほうがいい」

 NPBではこれまで、その選手が日本一などで十分に球団に貢献したと認められれば、ポスティングでMLB移籍を容認する“不文律”が存在してきた。ダルビッシュ有投手(パドレス)、田中将大投手(楽天)、大谷翔平(エンゼルス)らはその最たる例だ。

大谷翔平 ©文藝春秋

 所属のNPB球団としてもFAで見返りなく流出させるより、MLB球団から引き替えに譲渡金を受け取ることが得策との方針が定着している。

 一方でMLBでは労使協定により、25歳未満の海外選手はアマチュア選手と同様の契約しか許されていない。この規定のため、エンゼルス入りした時に23歳だった大谷はマイナー契約からのスタートを強いられた。契約金は231万5000ドル(約2億6000万円)に抑制され、年俸も調停の権利を得る3年目までは最低保障の5000~6000万円程度にとどまった。