福岡県篠栗町のマンションで碇利恵被告(40)の三男・翔士郎ちゃん(当時5)が餓死した事件。21日、保護責任者遺棄致死や詐欺などの罪に問われた“ママ友”・赤堀恵美子被告(49)の裁判員裁判判決公判が福岡地裁で開かれた。これまで一貫して碇被告への洗脳や、生活保護費を騙し取ったとされる一連の容疑を否認してきた赤堀被告だったが、判決は求刑通りの懲役15年が言い渡された。

 裁判で「指示はしていません」と語った赤堀被告。なぜ、翔士郎ちゃんは短い命を閉じなければならなかったのか。事件を報じた「週刊文春」の記事を公開する。(初出:週刊文春 2021年3月25日号 掲載 年齢・肩書き等は公開時のまま)

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 逮捕翌日の送検時。碇利恵は、痩せ細った姿を報道陣の前に晒し、虚ろな目で護送車に乗り込んだ。容疑を否認する“元ママ友”の赤堀恵美子が、布で顔を覆い隠していたのとは対照的に――。 

「子供の頃の利恵ちゃんは勝ち気で活発な女の子でしたよ。大人にも物怖じしないで意見を言うし、友達の先頭に立って遊んでいましたから。本当に驚きました」

中学時代の碇(卒業アルバムより)

 碇の少女時代を知る元近隣住民は、事件を聞いて耳を疑ったという。

 2020年4月、福岡県篠栗町で碇の三男だった5歳児の翔士郎ちゃんが餓死した事件。3月2日、碇と赤堀は保護責任者遺棄致死容疑で逮捕された。我が子の様子が急変した時でさえ、碇が連絡したのは119番ではなく、他人の赤堀だった。

 1981年、福岡県で生まれた碇。幼少期から10代を福岡市のベッドタウンの宇美町で過ごした。

「父が働いていた九州ローカルのスーパーマーケットの社宅アパートに両親、二つほど年の離れたお姉ちゃんの4人で住んでいてね。ところが利恵ちゃんが中2の頃、スーパーが閉店して、ひっそり引っ越していきました」(別の元近隣住民)

 碇家は同じ町内の住宅街に転居する。突如、訪れた家庭環境の変化。地元の公立中学に通う碇からは、幼い頃の溌剌さが消えていた。

「バレーボール部に所属し、普段は大人しい子たちのグループに交じっていました。ただ、誰かの言いなりになるような感じではなかったんですが……」(同級生)

 中学卒業後は、福岡市内にある男女共学の私立高校に進学。だが同時期に両親は離婚してしまう。高校の同級生が当時の印象を語る。

「口を開けば明るい、気さくな子でしたが、クラスの中では全く目立たないタイプでした。普通科ではなく就職科。部活はやっていなかったと思う。卒業後は地元のファミレスで働いているのを見かけましたね」

 その後、碇は自らの手で幸せを掴み取る。20代後半で結婚。夫は真面目でしっかり者の会社員だった。

 やがて夫婦は2人の男児に恵まれ、12年には篠栗町に新築のマイホームを3000万円のローンを組んで購入。町内では高級住宅地の約200平米の土地に構えた2階建ての一軒家だ。その2年後に誕生したのが三男の翔士郎ちゃんだった。

 家の庭にはブランコ付きの遊具が置かれ、夏場はビニールプールではしゃぐ兄弟たちの愉快げな声が響く。

「ご主人もいかにも優しそうな見た目で、本当に子煩悩な方でした」(近隣住民)

 だが――。16年4月、息子を通わせていた町立の幼稚園で、同じく3児の母だった赤堀と出会うのだ。