昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

山川穂高、外崎修汰らを独自路線で発掘。なぜ西武はドラフトで“お宝”を手にできるのか

文春野球コラム ペナントレース2022

2022/10/03

 今年のドラフト会議まであと3週間を切り、候補となる選手を一年中追いかけている自分にとっては最も忙しくも楽しみな時期となりました。

 本格的にこのような活動をし始めたのは2002年からですので、今年でちょうど20年ということになります。これだけ長くドラフト候補を追いかけていてもまだまだ分からないことだらけですが、何となく見えてくるものもあります。今回はそんな中から普段あまり触れられることがない、現場でのスカウティングの様子、そして西武の特徴などについて紹介できればと思います。

 どの球団も各エリアに担当スカウトを割り振っており、日々試合や練習に足を運んでいますが、球団によって異なる“色”のようなものがあることは確かです。

 自分も現場に足を運んだ時にはどの球団が何人見に来ているというのは可能な限り確認して記録するようにしていますが(一般客が多い高校野球の地方大会などは全てを把握できないこともあります)、比較的複数の人数で視察に訪れているのは巨人、阪神、中日、ソフトバンクの4球団という印象を受けます。

 一方で広島、ロッテなどは複数で視察に来るケースは少なく、多くても2人程度ということが多いです。これはスカウトの人数ももちろんですが、組織体制や球団の伝統も影響しているのではないでしょうか。

 例えば巨人は担当を持たない管理職である水野雄仁部長、榑松伸介次長の2人がおり、更に担当エリアを持ちながら役職にも就いている「プレイングマネージャー」とも言える立場が4人、そしてその下に各エリアの担当スカウトが5人という体制になっています。役職に就いていないスカウトから数えると上に3人の管理職がいることとなり、当然複数人で視察する機会も多くなります。それだけ多くの“眼”で候補選手をチェックすることを重視していると言えるのではないでしょうか。

 阪神などもスカウト部門の管理職以外に元監督の和田豊テクニカルアドバイザーが頻繁に視察に訪れています。また管理職ではなくても、有力選手にはそのエリア以外の担当スカウトが姿を見せているケースもあり、業界ではクロスチェックと呼ばれています。

 一方でロッテは管理職として肩書の付いているスカウトは榎康弘部長だけであり、そのエリアの担当スカウトは不在で榎部長だけが視察に来ているというケースもあります。また、広島は伝統的に担当スカウトに責任を強く持たせるという方針が強いとのことで、甲子園や全国大会のような大きな大会以外ではクロスチェックをしているケースは少ないように感じます。

他11球団と一線を画した雰囲気

 ここからが今回の本題と言える西武のスカウティングについてです。

 まず現場での印象では、どちらかというとクロスチェックは少ない球団のように感じます。現在編成部門のトップは渡辺久信GMで、大きな大会や有力な上位候補が出場する試合などには当然顔を見せていますが、アマチュア以外も統括している立場のため、担当スカウトと一緒に視察しているのは潮崎哲也編成ディレクターや前田俊郎育成アマチュア担当チーフということが多いです。

 西武スカウト陣の大きな特徴としては、他球団のスカウトとは比較的離れた場所で見ていることが多いということです。当然、スタンドが狭い球場や、スカウト席が設けられているケースでは並んで試合を見ていることもあり、他球団のスカウトと世間話や情報交換はしていると思いますが、それでも他の11球団とは一線を画しているような雰囲気があることは間違いありません。

 またスポーツ紙などの現場での取材対応には管理職が応えることを徹底しているようです。狙いとしては何気ない雑談から球団の方針が漏れることを防ぐためであり、これは西武の黄金時代を築き、“球界の寝業師”の異名をとった故根本陸夫氏(元監督など)の教えから来ていると言われています。西武の後に根本氏が在籍したダイエー、現在のソフトバンクにも少し似たような雰囲気を感じることはありますが、その方針がより色濃く残っているのは西武の方ではないでしょうか。