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荒れた秋場所を制した玉鷲…勝因は日に日に増した“威力”にアリ《“元安美錦”安治川親方の9月場所総評》

けっぱれ! 大相撲――2022年9月場所

note

 今場所も私元安美錦の安治川が振り返ります。

 秋場所後、この秋場所前に3年振りの巡業が開催されました。

 久しぶりの巡業ということもあって、たくさんのお客様に足を運んでいただき、本当にありがとうございます。感染対策でお客様との触れ合いに制限はあったとはいえ、充実した巡業になりました。

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 巡業では朝稽古で関取衆同士の稽古も行われました。精力的に稽古していた、豊昇龍や大栄翔や若隆景あたりが印象に残りました。大関同士の稽古や、横綱照ノ富士にも注目していました。私も巡業にはたくさんの思い出があります。

元安美錦(安治川親方) ©文藝春秋

今も忘れない緊張の日々…

 初めて巡業に出たのは、師匠の付け人として三段目の時です。

 右も左もわからず緊張の日々でした。

 当時の巡業部長は元北の富士の陣幕親方でした。控室にいるとき「あんちゃん、体小さいけど頑張れよ」と声をかけていただいたのを昨日のことのように覚えています。

 関取衆には横綱貴乃花や曙を筆頭に錚々たるメンバーばかりでした。また本土俵のほかに、野外に「サブ土俵」といって稽古ができる土俵があり、朝からサブ土俵でいろいろな力士と稽古をした後、本土俵に行って幕下との稽古に参加。その後サブ土俵に戻り、関取衆に稽古をつけてもらうという稽古漬けの日々でした。

 関取になって巡業に出た時、当時の巡業部長は元大関貴ノ花の故二子山親方でした。二子山親方には、ありがたいことに厳しく目をかけていただきました。また、私と同時に十両に昇進した高見盛と一緒に、稽古開始から終わりまで、毎日のように横綱に胸を貸していただきました。巡業では稽古も充実していましたが、もう一つの楽しみは全国各地の名産に舌鼓を打ち、名所をまわるなど楽しい時間でしたね。

 懐かしい思い出に浸るのはこのぐらいにして、話を戻しましょう。