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兄弟子に代わってあの力士がやってくれるはず。しかし――


 9日目を終えた段階で優勝争いの先頭を走っていたのは9連勝の北勝富士です。

 1敗で玉鷲、2敗で高安と錦富士が追いかけます。

 ここからは生き残りをかけて、厳しい戦いが続きます。

 北勝富士を1敗に引きずり降ろしたのは高安でした。かち上げて右からの力強い攻めで北勝富士を下します。北勝富士が星を落とすなか、玉鷲は厳しい当たりの勢いが止まりません。ここにきて日に日に立ち合いの威力が増していきます。もう年齢は関係ありません。目まぐるしく展開が変わりましたが、千秋楽を迎え2敗で玉鷲、3敗で高安の直接対決です。玉鷲が勝つとそのまま玉鷲の優勝で、高安が勝つと優勝決定戦に持ち込まれます。

 千秋楽の朝、私は「検索」でした。検索とは親方の職務係のひとつの、早朝から館内を見回る仕事のことです。

 国技館の中で、2階席の真上には優勝額が掲示してあります。近くで見ると想像以上に大きく見えます。また、2階席の一番上から見る土俵は、ライトで照らされ国技館独特の雰囲気に包まれています。午前9時前の見回り中に、ふと視線を上げると1枚の優勝額が目に留まりました。今場所の優勝力士と交換で外されてしまう優勝額は、「横綱稀勢の里」の優勝額でした。高安にとって稀勢の里は同部屋の先輩で、常に一緒に稽古を積み重ねてきた兄弟弟子です。兄弟子に代わってその場所が用意されているのではないか、高安に追い風が吹いているのか、と私は感じました。

 しかしながら、自分の相撲を取り切った玉鷲の「6場所制となった昭和33年以降最年長優勝」で、この荒れた秋場所の幕は閉じました。

玉鷲(右)は高安を押し出しで破って優勝を決める ©時事通信

 上位陣が崩れる中、ベテランと若手たちが今場所を支えてくれました。

 大関正代と御嶽海には、方々から厳しい言葉が出ているので、私が多くを語る必要はないと思います。

 力士たちは三役に上がることを目標に稽古しています。小結、関脇に上がると次は大関が目標です。三役の中でもさらに高い目標とされる地位です。私も目標としていただけに、今場所の大関を見ていると、少し寂しい気持ちになります。勝っても負けても大関として毅然としていてほしいというのは、私の独り言です。

さて、来場所に期待するのは…


 来場所に期待するのは、関脇で11勝を挙げて大関への足掛かりとした若隆景と、その若隆景の兄である若元春。彼には特に期待しています。また、翔猿、宇良や翠富士の小兵の活躍、スケールが大きくなってきた琴ノ若や、今場所で活躍した高安のさらなる大活躍も楽しみです。みんなけっぱれ!!

 今場所もたくさんのお客様に国技館にご来場いただき、感謝申し上げます。

 場所後には、元琴奨菊と元蒼国来の断髪式、秋巡業や初の試みとなる「ファン感謝祭」などたくさんの行事があります。

 是非とも大相撲を身近に感じていただけたら幸いです。

 来場所は九州場所です。また熱い戦いが繰り広げられるのを私も皆さんと一緒に楽しみにしています。

 九州では何を食べようか想像しながら、グラスを傾けたいと思います(お鮨にラーメンにアラに、挙げたらキリがありません)。九州は大好きな人ばかりで早く会いたいなぁ!

 今場所もありがとうございました。へば!!(津軽弁でさようなら)

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