酷評されたモハメド・アリ戦だったが…
異種格闘技戦の白眉は、ボクシング世界ヘビー級王者モハメド・アリとの決戦だった(1976年)。
しかしアリ戦は酷評される。当時のスポーツ紙を見てみよう。
『世界中に笑われた アリ・猪木』『“スーパー茶番劇”なにが最強対決』『サギだ!ペテンだ!』(日刊スポーツ)
『なんだ!アリ・猪木』(デイリースポーツ)
『“残った赤字”3億円』(スポーツニッポン)
『寝技に乗らぬアリ 看板倒れ ファンどっちらけ』(報知新聞)
『寝たきり猪木、アリ打たず』『世紀の上げ底ショー』(サンケイスポーツ)
猪木は後年、次のように語った。
「アリは一言しゃべれば世界中が耳を傾けてくれる。だけどオレがなにかしゃべっても、誰も聞いてくれやしない。自分だけが取り残されていくむなしさを感じた。しかも莫大な借金まで背負ってしまった。一言で言えば挫折ですよ」(スポニチ10月2日掲載、二宮清純「悼む」)
あれから46年経った現在、アリ戦の評価はどうか。
『総合格闘技が生まれた瞬間』(日刊スポーツ10月2日)
時間が経つにつれてアリ戦の攻防の凄さや先見性を「世間」から認められたのである。スポーツ紙も今ではふつうにプロレス情報を載せるようになった。
一般紙・全国紙はどう報じたか
では、一般紙・全国紙は猪木の訃報をどう報じたか。小さく報じて終わりなのだろうか? すると……。
朝日、読売、毎日、産経、東京、日経のすべてが猪木の訃報を大きく伝えた。朝日新聞は『アントニオ猪木さん死去 プロレス「燃える闘魂」元参院議員』(10月2日)と一面の真ん中で伝え、さらに社会面で『闘魂 リングで政界で 猪木さん』。そしてなんとスポーツ面に『猪木イズム 戦い続けた』という記事も。
スポーツ面でも報じたのは、毎日新聞、東京新聞も同じだった。
『迷わず行ったさ 猪木道』(毎日新聞)
『猪木さん死去 闘魂の軌跡 迷わず行けよ 貫いた一本道』(東京新聞)
猪木さん、あなたの闘いの数々が「一般紙のスポーツ面」に載っていますよ!