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「閉経すると女でなくなる」と考える女性も…44歳で出産した医師が乗り越えた“ホルモン補充療法”のリアル

2022/10/09
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更年期の救世主「ホルモン補充療法」という選択肢

──更年期世代の女性には、ホルモン補充療法は本当に自分を救ってくれるのかという迷いがあります。

船曳 私自身もホットフラッシュに苦しんだ経験があります。5年に及ぶ不妊治療の末、44歳で初めての出産をした直後からそれは始まりました。想像していた以上に辛かったので、エストロゲンと少量の黄体ホルモンを服用したところ、たちまち症状は改善し、子育てを楽しむことができました。

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 このようにホルモン補充療法の最大の利点は即効性です。特にホットフラッシュのような自律神経失調の症状はすぐに消えますし、記憶力の低下や不眠なども改善されます。ただし、症状はあってもエストロゲンの値が低くないという人にはまったく効きません。

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ホルモン補充療法で使われるパッチやジェル

 服用については、持続的に投与するやり方、服用を一定期間休むやり方があり、クスリの組み合わせもいろいろあります。閉経前か後か、子宮を摘出しているかなどによって服用のし方が変わりますので、自分に合ったやり方を選びましょう。また、服用していると生理、あるいは出血がありますが、最近は出血しないようにクスリを調整することも可能になりました。

 経口剤ではなく、ホルモン剤のパッチや塗り薬もあります。胃と肝臓を経由せずに毛細血管から直接血液に吸収されますから、副作用の心配がほとんどありません。いずれも保険が適用されます。

ホルモン補充療法で使われるパッチやジェル

 一時、乳がんのリスクが高くなるというアメリカの実験結果から、ホルモン補充療法を避ける人がいたのですが、その実験結果の正当性については見直しがなされ、今はホルモン補充療法の有益性が評価されています。ただし、ホルモン補充療法中は1年に1回の乳がん検診、子宮がん検診は必ず受けてください。

 なお、乳がん、心筋梗塞、血栓など、既往歴によっては再発のリスクがあるため、治療を受けることができない人がいます。ほかのクスリを服用中の人はクスリの飲み合わせがありますので注意してください。

──治療の止め時は?

ホルモン補充療法で使われるパッチやジェル

船曳 更年期は、エストロゲンの分泌が乱高下し、脳もカラダもそれに振り回されるから辛いのですが、エストロゲンが出ない状態が当たり前になれば、それに慣れていきます。辛い時期は3~5年ですから、ホルモン補充療法はその間の辛さを和らげてソフトランディングさせるものと考えれば、更年期が終わる頃を止め時の目安にするのもいいと思います。

 エストロゲンは骨量を増やすので、骨粗しょう症の予防のために服用し続ける人もいます。ホルモンは微量で大きな力を発揮しますので、摂り過ぎては危険ですから、投与については医師に管理してもらってください。