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《日本人が知らない中国共産党》末端組織が「生活者の愚痴」を吸い上げる“手強い”社会システム

2022/10/15
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約9700万人「現場」に根をはる党組織

 中共といえば、日本の報道では習近平主席や政治局常務委員などの超幹部ばかりに注目が集まる。しかし、こうした党中央は氷山の一角どころか、組織の頂上でしかない。中国において中共の最重要とされている組織は、末端の「党支部」だ。一つ一つの党支部は50名未満のメンバーで構成される小さな組織でしかない。2021年末の時点で434.2万の党支部が存在する。

 中共の組織は中央・地方・基層に大別される。「基層」とは、地域や職場など社会の末端部分を指す。中央の対義語である。だが、この基層という言葉に「下流」「底辺」「三流」といったマイナスイメージはない。あえて日本語で近い言葉を挙げると「現場」「草の根」あたりであろうか。この「基層」に根をはっていることこそ中共の強みである。

 中共中央組織部によると、2021年末の時点で中共党員は9671.2万名存在し、毎年、増加傾向にある。党員のほとんどは政治家でも官僚でもなく、農家やサラリーマン、工員、教師、退職者、そして学生である。何らかの幹部ではなく、また党務専従者でもない一般の中共党員は、ほぼ全員が、村、都市の地域コミュニティ(社区)、企業、軍や学校などに設置される党支部に所属している。日本の政党の支部は各地域に設置されているが、中共の党支部は地域に設置されるものよりも職場に設置されるもののほうが多い。また、村や社区の党支部に所属しているものは少数で、多くの党員は職場の党支部に所属している。

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農村の発展も党支部が担う

 入党を希望するのは大学生など若者が中心で、その動機は、純粋に党活動に興味があるとか、国有企業への就職に有利になるから、と様々だ。学生の場合、学内の党活動を通じて他学部の学生と交流し、恋人や友人を見つけるといった出会いの側面もなくはない。時には職場などで模範的な活躍をしている者を末端幹部が党に勧誘することもある。中共の勧誘を嫌がるインテリや中産階級も最近は珍しくない。

一般党員が行う「ボランティア」

 入党希望者は大学や職場などの党支部で数年かけて研修と審査を受ける。そのプロセスで重視されるのは政治的な知識や思想・態度以上に、日ごろの学習態度や勤務態度、協調性やコミュニケーション能力等の面で、周囲の模範であるかどうかだ。

 一般党員は、党支部で一体なにをしているのか? というと、定期的に集まって勉強と話し合いをし、さらに、ボランティア活動を行う。

 党支部の学習はとても重要な機能だ。党員は政治思想や党内法規や党中央の新しい方針などを学習し続けなければならない。政治思想は指導者が代わるたびにアップデートされるし、党の規約もたびたび改正されるので、入党後も学習を続けなければならない。これは若い党員に限った話ではなく、中高年の党員でも、新しい知識や思想を学習し続けなければならない。