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「終盤はほぼ毎日のように殴られていた」

検察官「LINEは、DVの発覚を免れるために言ったことなのではないですか?」

武藤被告「それはありません。LINEを見てもらえると分かるように、そう言え、とか、圧力とかをかける言い方ではありません」

検察官「奥さんは調書に『そのように提案しなければ怒られる。暗黙の了解になっていた』と述べていますが?」

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武藤被告「圧力をかけたつもりはありません」

検察官「ではなぜ、あなたに暴力を振るわれたことをバレないようにしたと?」

武藤被告「そこは彼女の思いやりだと思っています」

 妻が病院に対し、被告からの暴力を「空手の練習」と弁解したのは、被告によれば妻の“思いやり”だったのだという。「終盤はほぼ毎日のように殴られていた」と妻は調書に語っていたが、武藤被告はこれを「1週間に1度とか……」と少なめに述べ、最終的に「頻度はなんとも申し上げられない」と言葉を濁すに至った。

 また「殺すぞ」といった文言で妻を脅したことについても「他人であれば発しない言葉、夫婦という甘えがあって、発してしまったのかなと思います」などと“夫婦間だから”という甘えからの言葉だったと語っていた。

写真はイメージ ©iStock.com

“妻の過去”にこだわり続けた

 “一生で最初で最後の相手”であり“一緒に墓に入る”とまで想っていた妻に対して、これほどの暴力を振るう理由として“妻の過去”にこだわる武藤被告に対し、裁判官も尋ねた。

裁判官「一生この人しかいない、と心で誓っていたんですよね。そういう人に、痛い思いをさせる。なぜそんなことをできるんだろうと思うんですが、そこはどうですか?」

武藤被告「自分自身、考えても、なんでと……ただ本当に、暴力の言い訳をするつもりも全くなく、暴力を振るった理由を自分に問うた時、これから結婚する人が、結婚前に言っていた過去のいろんな出来事……そうなんだと(中略)過去の悪いことも、理解して、ありがとう、と、過去のこととして流すと決めていた。ただ結婚するにつれて(中略)結婚する故に、余計興奮して最終的に暴力を振るってしまいました」

 最後まで一貫して“妻の過去”にこだわり続けた武藤被告は「逮捕時に新聞で実名が報道されて組織に迷惑をかけた。国税局の名に傷をつけた。反省の言葉しかありません」と国税局へは“反省”を述べ「なんであんなことしたんだろうという気持ちしかない」と後悔を滲ませた。この裁判の判決を受けて国税局から処分が下される予定だという。

 妻への暴力の原因を“妻の過去”に見出している武藤被告は、この現状は自分の行動が招いた結果であると認識しているのだろうか、それとも、やはり“妻の過去”が原因だと思っているのだろうか。