日産自動車の正規ディーラーとして福島県内全域に店舗を展開する「福島日産自動車」。今年3月、同社の金子與志人(よしひと)社長(55)が退任し、甥の金子與志幸(よしゆき)専務(35)が社長に就任しているが、その裏で、與志人前社長が総額1億6700万円にも及ぶ関連会社の資金を不正に送金していた疑いがあることが「週刊文春」の取材でわかった。
福島日産の設立は1938年。従業員は約630人、売上高は約190億円(2020年度)に上る。「社長は代々金子家が継ぎ、役員のほとんどを金子一族が占める同族経営の企業」(地元記者)だ。日産の正規ディーラーではあるが、日産と資本関係は無い。
突然の社長辞任劇の裏に「1億6700万の不正送金疑惑」
社長が突如、辞任を申し出たのは今年3月のこと。「コロナ禍で経営環境が激変した中で、與志人氏が体調を崩し、長期療養が必要と判断して自ら辞任を申し出た、というのが会社の発表」(同前)だった。
同社社員が言う。
「確かに3月に入ってから、会社で社長を見ないな、とは思っていました。退任にあたっては、社員にLINEで『体調不良で休むことになった』『入院するほどではないが、皆さんにご迷惑をかけるので交替する』と不思議な内容が送られてきました」
與志人氏は今年2月に県自動車販売店協会の会長に再任されたばかり。にもかかわらず、社員に対して明確な理由が示されないまま、突然、社長交代がアナウンスされたのである。
実は突然の辞任劇の裏で、社長にある“疑惑”が浮上していた。福島日産の関係者が語る。
「與志人氏が関連会社の資金を不正に送金していた疑いが持ちあがったのです」
疑惑の関連会社とは、日産部品福島販売。社長は同じく與志人氏が務めていた。
「この日産部品福島販売から、2019年10月から2022年1月にかけて、『クレアーレ』に計1億1700万円、そして『BUSOU』に計5000万円、合わせて1億6700万円もの資金が流れていたようなのです」(同前)
クレアーレは東京に拠点を置く2017年設立の自動車部品販売会社。代表のA氏は與志人氏とは旧知の仲だ。BUSOUも2019年設立の自動車部品販売会社で、所在地は福島日産と同じ住所。代表取締役は與志人氏だ。つまり與志人氏は、自らが代表を務める会社から、知人の会社と自らが代表を務める別会社に多額の資金を送っていたのである。