18歳のときマスターベーションマシンを製作
18歳の時、彼は町に引っ越し姉と住んだ。その町の大学で物理と工学を学ぶことになったからだ。姉は日中は大抵働きに出ていたので、彼は人生で初めて長い時間1人になった。寂しさを感じた。
「だから機械を作ることにしたのです……」
「機械?」私は少しだけ背筋を正して尋ねた。
「マスターベーションマシンです」
私は口籠もってしまった。「な、なるほど。どうやって動くんですか?」
「金属の棒をレコードプレーヤーにつなぎます。棒の反対の端には金属のコイルをつなぎます。コイルは柔らかい布を巻くんですが」
絵を描いて見せてくれた。
「布とコイルのところにペニスを入れるんです」。彼は、「ペニス」をまるで2つの単語であるかのように発音した。“ペニ”を「ペン」と筆記用具みたいに言ってから、ネス湖の怪獣みたいに「ネス」と。
私は笑いたい衝動に駆られた。しかし一瞬のうちに思い巡らし、その衝動は何か他のものを覆い隠すためなのだと気がついた──私は怖いと思ったのだ。本当の自分を表してみるよう彼に促したはいいけれど、自分では助けることはできないのではないかと恐れていた。
「レコードプレーヤーが回るたびに、コイルが上下します。コイルのスピードはレコードプレーヤーの回転数の切り替えで調節できます。スピードは3段階あります。この方法で自分自身をぎりぎりのところへ持っていきます。何度も。決していってしまうことはないように。タバコを吸うと自分を引き戻してくれるようです。だからよくその手を使います」
微調整しながらジェイコブは何時間もオーガズム直前の状態を維持していた。「これは」と頷きながら彼は言った。「ものすごく中毒性があります」
ジェイコブは自分が開発した機械を使い、1日に何時間もマスターベーションをした。その快楽は何ものにも代えられなかった。彼はやめると誓った。機械をクローゼットの高いところに隠したり、完全に解体して部品を捨てたりした。しかし1日か2日するとクローゼットやゴミ箱から部品を引っ張り出し、また組み立て始めるのだ。
誰もが持つ依存症の可能性
おそらく読者は、ジェイコブのマスターベーションマシンには拒絶感を覚えてしまったことだろう。私も最初に聞いた時はそうだった。こんな話は自分が日常で経験することとはひどくかけ離れていて、自分の人生にはほとんど関係ない、極端な性的倒錯だと思うだろう。
しかし、もしもそう思うなら、あなたも私も現代に生きる者としてとても大切なことを認める機会を逃してしまう──私たちは皆、ある意味で自分自身のマスターベーションマシンに夢中になっているのだ。
40歳になった頃、私は恋愛小説に不健全な愛着を持つようになっていた。ありえない設定のロマンス、ティーンエイジャーの吸血鬼が出てくる『トワイライト』という小説が依存症の始まりだった。『トワイライト』を読んでいるというだけで私は充分恥ずかしく、夢中になっているなどとはとても認められないでいた。
『トワイライト』はラブストーリーとスリラーとファンタジーとが絶妙に混じり合うツボを押さえた作品で、中年に入ってしまった私に完璧な逃げ場を与えてくれた。私だけではなかった。何百万という同年代の女性が『トワイライト』のファンになっていた。小さな頃からずっと読書家だった私が本の虜になるということ自体は特に異常なことではなかった。しかしいつもとは違った。過去の嗜好や当時の人生からでは説明できないようなことが起きたのだ。