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「あそこの社長おかまになったんやって」と噂されたことも

――千尋さんが女性の服を着て会社に行くようになった時、社員の反応はいかがでしたか。

今西 最初の頃は、みんな戸惑っていましたね。周りから「あそこの社長おかまになったんやって」って噂されたこともあって、身内から「社長としての信用がなくなるやろ」と、社長を続けることを猛反対されました。いろいろと悩みましたけど、家族親戚の意見を聞いて社長を退くことにして、今は製造部長として働いています。

――千尋さんのご両親はどういった反応でしたか。

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今西 うちの両親も「何言ってるんだ。頭おかしい」と全く取り合ってくれなくて。会わない時期もありました。でも、10年経ってようやくですかね。少しずつ、受け入れてくれるようになって、連絡も取り合うようになりました。

 この前、母から「男でも女でも我が子は我が子で、何歳になっても子どもは子どもやからね」って言われて。着物を着て実家に帰ると「似合ってるよ」って言ってくれたりもするんです。

家族と別居をしていた時に通っていたお店「ふじわら」で取材を受ける今西千尋さん(56)

 それでも、親戚の集まりには「来ないでくれ」と言われますね。叔父が亡くなった時も、私だけ知らされていなくて。少し経った時に亡くなったと言われました。葬式に来られるのが嫌だったんだと思います。やっぱり周りの目を気にしてしまうのはあると思うので、それは仕方がないです。一歩一歩進んでいくしかないと思っています。

――取引先や同業者から何か言われることはありましたか。

今西 うちの会社と取引している会社の役員さんは、私が出演したABC朝日放送テレビのドキュメンタリー番組『パパがある日女性に』の告知ツイートをリツイートしてくれました。

 そのほかにも、うちの会社が融資を受けなければいけない時に、周りから「あそこはニューハーフだから誰からもお金貸してもらえんとちゃう」と、噂が広まったことがあって。その時に銀行の方から「今西さん心配しなくていいですよ。銀行は業績しか見ませんから」と言われました。

今西千尋さん(56)

 身内にはいろいろ言われましたけど、仕事の取引先の方たちは、会社の業績しか見てないんです。そういう意味では結果さえ出せば、女性とか男性とか関係ないんやと思います。

――千尋さんは離婚をされた後も、戸籍の性別は変えていないんですよね。その理由は何でしょうか。