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「出来るだけ現状復帰を目指す」修復に掛かる費用は…

 ことほど左様に重要な建造物だけに修復が気にかかるところだ。永井室長はこう説明してくれた。

「完全に元のままというのは無理ですが、出来るだけ現状復帰を目指したいと思っています。壊れた扉でも大きな板や材木でそのまま使えるものを活かしながら、へっこんだところや曲がったものは補正する。粉々になった箇所は使えないので、サラの木ではなく材質が同じようなもので、今の技術では、わざと古く出来るらしいのでそうした木材も使ったりしながらやっていきたいと思っています。それも文化庁と京都市と府、それに施工業者とも協議しながら進めていきます」

 とはいえどれくらい経費はかかるのだろうか。「どこまで完全修復できるか、これもまた文化庁など4者と話し合いながらやっていきます」と永井室長。「それでもどれくらいか予想はされているのでしょう」と食い下がると、「まぁ一昨日の話ですからすぐにいくらとは計算できません。まだまだ先のことです」とだけ話した。

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車が突っ込み、出入り口にある木製の扉などが壊れた東福寺の「東司」 ©共同通信社

 同じ質問を府文化財保護課にしてみたが、こちらも同様の回答で、「これから東福寺が毀損届を作成して、市の文化財保護課に、さらに文化庁に提出することになりますから、いつ、いくらというのはそうすぐには出ないでしょう」と説明してくれた。

「事件として処理することはありません」

 さて所属する京都古文化保存協会主催の「京都非公開文化財特別公開」の視察巡回で来ていて、事故を起こした職員は、果たしてどうなるのだろうか。

 京都東山警察署の池野喜彦副署長によると、「本人は、相当ショックを受けていましたね。故意ではなく全くの過失ですし、事件として処理することはありません」とのことである。

 今後のことについては、永井室長も「保険で処理されることでしょうし、とにかく人身事故にならずに済んでよかったです」と御仏に仕える方らしい心配りで言葉を結んだ。

東福寺の紅葉 ©時事通信社

 東福寺は、2000本の紅葉が有名で、真っ赤に染まる晩秋になると、40万人を超す観光客が訪れることで知られている。中でも人気の夜間拝観は、11月18日から30日まで開催される。残念ながらそれまでに東司が修復されることはない。