「びっくりしましたね。ちょうど開山さんの命日だったので、いろんな来客があってその対応をしているときにこの事故が起きたのです」

 こう語るのは、東福寺の永井慶洲・宝物殿管理室長(72歳)だ。開山さんとは、1236年(嘉禎2年)に東福寺を創建した聖一国師円爾弁円(しょういちこくしえんにべんえん)のことで、まさに命日の法要が取り行われている最中だったからだ。

運転を誤って逆進し、お尻からトイレに突入

 この事故とは、10月17日午前9時半ごろ京都市東山区本町の東福寺で、文化財の見回りに来ていた京都古文化保存協会の職員(30歳)が、駐車場に止めてあった乗用車の向きを変えようとして、バックのギアを入れたままアクセルを踏んだため逆進し、国の重要文化財に指定されている木造建築物の東司の中まで突入したもので、幸いケガ人はいなかった。

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東福寺にある日本最古の便所「東司」に誤って突っ込んだ車=17日、京都市東山区[京都府教育委員会提供] ©時事通信社

 事故によって、入口の扉がめちゃくちゃに壊れ、壁の一部が破損した。実は東福寺では2012~2013年ごろ、本堂と通天橋を通って開山堂に行く途中の柱に乗用車がぶつかる事故が2回起きている。

「しかし今回は重要文化財ですからね。すぐに文化庁や市、府の文化財保護課とも協議して今後どうするか、今朝(19日)も相談していたばかりなんです」(永井室長)

 被害にあった東福寺は、臨済宗東福寺派の総本山で、京都五山の一つ。創建当時、奈良における最大の寺院であった東大寺と最も盛大を極めた興福寺から1文字ずつとって寺の名前とした。

東福寺(Photo by Behrouz MEHRI/AFP)

 国宝の禅宗寺院最古の三門をはじめ、重要文化財としては、室町時代前期から残るこの東司だけでなく、常楽庵、月下門(げっかもん)、仁王門など10ヶ所以上を数え、他にも数多くの文化財を所蔵する。