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村役場で聞いた新事実

 酒田市を後にして、戸沢村役場に向かった。車で1時間ほど。時期は3月中旬。海側の酒田市は積雪がほとんどなかったが、内陸の戸沢村は村全体が雪にすっぽり埋もれていた。

 例年、積雪は1.5mにもなるという。人口は約4300人。最上川が村を横断するように流れており、松尾芭蕉が、かの有名な「五月雨を あつめて早し 最上川」の句を詠んだ地としても有名だ。

 役場で出迎えてくれたのは、総務課危機管理室の室長・小林直樹さん。小林さんによれば、この村には、現在も数十頭ほどのツキノワグマが生息しており、暮らしの中で見かけることも珍しくないという。小中学校の付近がクマの通り道になっていたり、畑や民家の裏に出没することもあるそうだ。

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「ただ、クマに襲われたという話は聞きませんね」

 戸沢村では、山形県と随時情報を共有しながら、棲息数を調整するために、定期的にクマ狩りが行われている。その際は、この危機管理室が事務所となり、猟友会のメンバーに連絡する。

 かつては、村内だけで数十名いた猟友会メンバーも、今では16人にまで減ってしまったとのこと。

 小林さんには、事件に関する取材をしたいと申し込んだ際、例の「記事」のことも伝えた。すると、当時の担当職員にも当たってくださり、興味深いお話をしてくれた。

「事件の前なのか後なのかはわかりませんが、村内の角川という地区で、犬がクマを連れて来て山に戻らなくなってしまい、ある農家にしばらく居ついていたことがあるようです。

 その方のお話だと、当時の村の職員は山形県の環境保護部自然保護課(現・環境エネルギー部みどり自然課)と、『クマをどうするか』という相談の中継ぎをしたことがあったとか。最終的にはクマを山へ放しましたが、その家の方は現場には立ち会っておらず、県職員の方が代わりに立ち会ったそうです。

 ただ、その方の家からそれぞれの事件現場までは10㎞程度離れていて、山系も違う集落なので、『事件との関連性については疑問が残る』と言っていました」