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二次相続ラッシュで変わる2030年の“東京住宅地事情”

2022/11/01
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「二次相続」にはさまざまな問題が

 ところが、一次相続を無事通過したとしても二次相続になるとことはそう簡単ではない。すでに配偶者はいないので配偶者控除1億6000万円分の控除はない。自宅も相続人になる予定の子供と同居をしていないかぎり、8割圧縮の特例は適用されない(「家なき子特例」が適用される場合は除く)。最近では、子供は親とは離れて別の場所に家を構えているケースが多いので、これでは自宅の評価額もバカにならないということになる。

 法定相続人も一次相続時と比べて確実に1人分は減る。先ほどの事例でいえば、一次相続の際は法定相続人が3人なので、基礎控除額は4800万円だったものが、4200万円に減額されていることになる。

 こうした状況下で起こるのが二次相続問題である。たとえば東京都世田谷区桜新町周辺を例に考えてみよう。桜新町といえば、昭和時代日本人なら誰でもが知る漫画、サザエさんの家があった街だ。桜新町付近の路線価は場所にもよるが、おおむね坪あたり200万円くらいだ。仮に敷地が50坪あるとすれば、土地の相続税評価額だけで1億円になる。

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タラちゃんの選択肢は一つしかない

 たとえばサザエさんの家も代替わりしてマスオさんとサザエさんが住み、一人息子のタラちゃんが独立してサラリーマンだとしよう。サザエさんが亡くなっても一次相続であれば、配偶者控除や小規模宅地等の特例が使え、マスオさんにはまず相続税の心配はなさそうだ。

 ところが、その後にマスオさんが亡くなるとして、二次相続となると大変だ。桜新町の自宅は土地で1億円、建物が1000万円、マスオさんが親から相続した、たとえば実家の評価額が3000万円、預貯金が1000万円あれば、計1億5000万円がマスオさんの遺産総額になる。

 この場合、相続人は一人息子のタラちゃんだけになるので相続税はなんと2860万円。相続した預貯金だけでは到底税金を支払えないことになる。マスオさんの実家がうまく売れればよいが、地方だとなかなか売れないケースも多い。タラちゃんの選択肢は一つしかなくなる。桜新町の実家の処分だ。