新聞マニアにとって楽しみな日が今年もやってきた。それは「成人の日」。
新聞を擬人化すればおじさんである。だから張り切って新聞おじさんは新成人にメッセージをおくる。しかしだいたい説教臭くなる。
成人式社説の名作 2012年の朝日「尾崎豊を知っているか」
私が今でも名作だと大切にしているのが2012年の朝日新聞の社説。
タイトルは「尾崎豊を知っているか」。
《ああ、またオヤジの「居酒屋若者論」か、などと言わずに、聞いてほしい。
キミが生まれた20年前、ロック歌手・尾崎豊が死んだ。》
オヤジという自覚を持っているが、次第に饒舌になってゆく。
《彼が「卒業」「15の夜」といった曲で歌ったのは、大人や社会への反発、不信、抵抗。恵まれていないわけじゃないのに、「ここではない、どこか」を探し、ぶつかり、傷つく。
その心象が、若者の共感を呼んだ。尾崎の歌は高校の教科書にも採用されたほどだ。》
「ともあれ、おめでとう。」
このあと朝日おじさんは「尾崎豊はどこへ行ったのか」と問う。そして、
《いくら「若者よもっと怒れ」と言っても、こんな社会にした大人の責任はどうよ、と問い返されると、オヤジとしても、なあ……。
でも、言わせてもらう。》
壮大なひとりごとが始まった。続けよう。
《私たちは最近の社説でも、世界の政治は若者が動かし始めたと説き、若者よ当事者意識を持てと促した。それだけ社会が危うくなっていると思うからだ。
だから、くどいけれど、きょうも言う。成人の日ってのは、そんなもんだ。
ともあれ、おめでとう。》
朝日おじさんは「尾崎みたいに社会に対してもっと怒れ」と檄を飛ばした。そして言うだけ言って最後に「ともあれ、おめでとう」。やっぱり居酒屋で絡まれてるみたいだ。この力技を名作と言わずになんと言う。