3世代同居世帯がごく普通のことであるフィリピンでは、人々は1世帯5、6人が平均の大家族の中で暮らしており、高齢者や若年層に多い失業者など子どもの面倒をみる「人員の余裕」が多くの世帯にはある。年寄りを敬う習慣は根強く残っており、一人暮らしの高齢者はほぼ皆無な社会だ。職のある若者でも、少なくとも結婚して子どもが生まれるまでは、両親と同居を続ける例が圧倒的に多い。
ジェンダーギャップの小さい国
世界経済フォーラムによる2021年版「ジェンダーギャップ指数」によると、世界156カ国・地域の中でフィリピンはギャップの少なさで世界17位、アジアではトップだ。女性の社会進出がめざましい国だ。ちなみに日本は世界120位で、フィリピンよりもはるかに「国会議員数」「経済参加と機会」などの評価で劣っている。
この女性のめざましい社会進出の背景には中間層以上の場合、月額1万円ほどで住み込みのお手伝いさんを自分の出身地など農村部から呼んで雇えるという事情もあるが、貧困層でも、世帯内の高齢者や失業者の兄弟ら誰かしらが子どもの面倒をみてくれる社会になっている。
また、フィリピンでは、シングルマザーの数は非常に多く、10代の妊娠、それも10代前半から半ばの妊娠が社会問題にもなっているが、シングルマザーへの社会的偏見は薄い。シングルマザーの子も一族全体で育てている。
さらに、カミングアウトした性的少数者(LGBT)の人々も日本に比べると格段に多く、ごく普通にオフィスで勤務している姿も見かける。LGBTへの偏見や差別もまた、日本と比べると少ないと言える。
GDPの7割を占める旺盛な個人消費
現在のフィリピン経済の成長をけん引する最大の要因の一つはGDPの約7割を占める旺盛な個人消費であり、それを支えているのが出生率の高さでもある。人口1億800万に達し、数年後には日本の人口を追い抜くとみられるフィリピンでは、コロナ禍前まで個人消費は年々伸び続けてきた。