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日曜は必ず礼拝 父に無理やり連れ回され、肩を脱臼したことも

 礼拝では、たびたび「自由な恋愛は殺人以上の罪で地獄の底に行く」と“洗脳教育”を受けた。加えて、彼女を苦しめたのは、経済的困窮だった。献金のため家計は逼迫し、美容院にも行かせてもらえない。父から「お前はこの髪型が一番似合う」とおかっぱ頭にされ、服は全部親戚などのお下がり。伝道に明け暮れる母の代わりにきょうだいの食事を作るのが、小学校時代の彼女の役割だった。

「周りの子たちと明らかに違うという劣等感がずっとありました。宗教のことは恥ずかしくて誰にも言えなかった。友達とは対等な関係ではなく、いつも『羨ましいなぁ』と思って眺めていました」(小川さん)

 小学校の6年間は、服装のみすぼらしさが原因で壮絶ないじめを受けた。だが、母に相談しても「神様がさゆりちゃんに期待しているからだね」と言うばかり。一家は教会を中心に回っていた。日曜は必ず礼拝。父に無理やり連れ回され、肩を脱臼したこともあった。月数回、朝5時からの祈祷会に参加。「貧血で気絶したこともありましたが、あの頃は宗教虐待という認識はなかった」と話す。

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「父が三重県内の教会長になったのは小学校高学年の頃。私は親の期待に応えたいという思いが強く、自らイベントに参加していました。教会の教えでは、人の悪口や恋愛の話を聞くことすら悪。学校にいると『いま私は悪いことを聞いている。地獄に落ちるんじゃないか』という考えになってくるのです。教会の活動に没頭すればするほど『私が地獄に落ちることはない』と安心できた」(同前)

世界平和統一家庭連合の田中富広会長

ある公職者に肩を抱かれて身体を触られ…

 高3の頃、小川さんは教会が主催した「原理講義大会」で全国2位に輝く。

「自分の居場所を探すという感覚でした。祝福(結婚)を受けるための準備で修練会に参加したこともあります」(同前)

 だが、そんな彼女に思いもよらない悪夢が襲う。

「修練会の最終日、ある公職者に個室に連れて行かれ、肩を抱かれて身体を触られたのです。その後も『好きだ。会いたい』と何通も長文のメールが届いた。恋愛禁止と教えられ、それを守ってきたのに『返信をしないと天国で会えないよ』とも言われました」(同前)

 そうした“脅迫”は次第に彼女の心身を蝕み始める。両親や教会に相談すると「悪霊が憑いている。(教会本部のある韓国の)清平で取ってきなさい」と一言。それを受け、小川さんは3カ月間、除霊のための修練会に参加したが、心身の軋みは収まらず、清平の精神病院に2週間ほど入院する。