約20万円のバイト代を母に無断で引き出され…
そこに、追い打ちをかける事態が発覚。必死で貯めた約20万円のバイト代を無断で母に引き出されていたのだ。帰国後の彼女を待っていたのは、変わらず「神様」と「サタン」の飛び交う世界。彼女は希死念慮に苛まれながら地獄の日々を送った。冒頭の文章は、失意のどん底で書き殴った“遺書”である。
〈お母さんのことが本当に本当に大大大好きだった〉
その行間からは両親に対する愛憎半ばする思いが滲む。だが、行き着く先は、教会への怒りと両親への深い絶望だった。
〈お父さんお母さんがしてしまった間違いは、やはり消化しきれない。健康に生まれて体力もあって運動も好きだったのに、今は毎日吐き気がして体が動かなくて横になることしかできないゴミになってしまった〉
「今でも涙が止まらなくなる」
小川さんが両親と決別したのは今から約6年前、20歳の頃だ。連帯保証人のいらないアパートに移り住み、連絡を絶った。
「親からは『心配している』というような内容のメールが何度か来ましたが、しばらくすると、それもなくなり『教会のイベントがあるんだけど来ない?』というメールが届くようになりました」(小川さん)
数年後、小川さんは現在の夫と知り合い、今年4月には長男が誕生している。
「うつ病やパニック障害の本を読んだり、夫と対話する中で『なぜパニック発作が出るのか』ということを学ぶと、少しずつ心身の状態が改善されてきました。でも、今でも突然、当時の環境を思い出し、涙が止まらなくなることがあります。
15歳の頃から一生懸命バイトをして貯めた約200万円。そのほとんどを母に没収されましたが、彼女から1円も返金してもらっていません。『生活費に消えた』と話していましたが、両親は『先祖供養をしている』と語り、今でも献金を続けています」(同前)
9月4日、小川さんはSNSを通じ、元信者らを対象にアンケート調査を開始。関東に住む祝福二世の女性(30代)からは次のような切実な報告が届いた。
〈小学校低学年の頃、母がワシントンに宣教に行き、私はラーメンと納豆で飢えを凌いだ。中学でいじめを受けたとき、親は『愛の試練やねえ』と話し、取り合ってもらえなかった〉
目下、小川さんはそれらの結果を元に、高額献金の規制、団体の規制・解散、被虐待児を守るという3つの柱を掲げ、立法措置を訴えている。岸田首相が永岡桂子文科相に対し、統一教会の調査を行うよう指示したのは10月17日のことだ。
彼女の戦いは今、大きな山を動かしつつある。