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出発点は「女性に刺さるラブコメ」だったが…

――『カルテット』(TBS)や『大豆田とわ子と三人の元夫』(カンテレ/フジテレビ)など、数々の話題作・ヒット作を手がけた敏腕プロデューサーの佐野さん。たしかに、相当「バリバリ」していそうなイメージがありました。

渡辺 私自身もそうなんですが、真剣にものを作ろうと思えば思うほど日々「反省会」で、毎日ボロボロなんですよ。だから、初めてお会いしたときから佐野さんの内省的な感じが、すごく信頼できそうだなと思って。

 当時、佐野さんはTBSにいらっしゃったんですが、最初に依頼にみえたとき、上司からのオーダーは「F1・F2層(20~34歳女性・35~49歳女性)に刺さるラブコメを」というもの。

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 それで、ラブコメの打ち合わせをがんばって30分ぐらいやったんですけど、お茶をいれ直してるあいだに「政治家の誰々が許せない」とかいう話になり、ついそういう話ばかり盛り上がってしまって。

©文藝春秋

――「そっちをやったほうがいいんじゃないか」という話になった、と。

渡辺 その後、佐野さんがいくつか事件のルポルタージュを読ませてくれました。私は不勉強で、知らない世界、知らない現実で、とても衝撃を受けたんです。これこそが、私と佐野さんが同じ熱量でいっしょに作っていける題材だと感じました。

 しかし現実は厳しく、TBSに企画を出しても通らない。「じゃあもう、いいじゃない。ラブコメやろうよ」と、私のほうは切り替えようとしたんですが、佐野さんは「今更あやさんとラブコメなんてやりたくありません。絶対に『冤罪もの』のほうを書いてください!」と言うわけです。

「絶望的な状況が2年間ぐらいありました」

――佐野さんの中ではもう、走り出してしまった。

渡辺 それで、佐野さんが具体的な調査や取材をして作ってくれた資料をもとに、私は原型となる8話を書き上げました。設定も登場人物も現在とほぼ同じです。しかし案の定、どこに持っていっても企画が通らない。

 そうこうしているうちに、いろいろな事情で佐野さんが会社を辞めてしまわれた。そのうえ体調を崩されたりもして、けっこう絶望的な状況が2年間ぐらいありました。