北アフリカ・モロッコで生まれ育ち、神戸大学工学部へ留学中に、鎌倉時代から続く有馬温泉「御所坊(ごしょぼう)」主の息子と出会って結婚した金井良宮(らみや)さん。現在は「御所別墅(ごしょべっしょ)」のブランドディレクターを務めるラミヤさんだが、海外にルーツを持ちながら、伝統ある日本の温泉地で家業を切り盛りする環境にどう馴染んでいったのか。
「YOUは何しに日本へ?」(テレビ東京系、7月11日放送)にはラミヤさん本人、義父や夫だけでなく、7歳の娘も出演。仕事と子育てに奔走する、ラミヤさんの知られざる日常とは。長年温泉旅館を取材し、『女将は見た 温泉旅館の表と裏』(文春文庫)などの著書でも知られる山崎まゆみ氏がじっくり話を聞いた。(全2回の2回目/前編から続く)
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留学先に日本を選んだ理由
――そもそも、ラミヤさんはなぜ留学先に日本を選んだのでしょうか?
金井良宮さん(以下、ラミヤ) ヨーロッパやアメリカよりも遠い文化に触れたかったんです。そしてフランスが伝えるドキュメンタリーやニュースを通して、日本には侍とか忍者とか、そういう伝統的なイメージがありながらも、ロボットや車やテクノロジーなど洗練されたイメージもありました。もう1点、高校の地理の授業で教わりましたが、日本は資源が少ない。それなのに、経済大国。資源が少ないのはモロッコと同じなのに、なぜだろうと興味を持ちました。
――モロッコに暮らすご両親は、ラミヤさんが日本に留学することを心配し、反対はしなかったのでしょうか?
ラミヤ 兄がロシアに留学していましたし、弟もフランスやアメリカで留学、現在もカナダにいます。父もベルギーとアルジェの大学で学び、フランスで博士課程を修了し、モロッコの大学で法学を教えていました。母は高校でアラビア語を教えていますが、その母との出会いも、留学先だったという経緯があります。子供たちが海外に留学することには賛成してくれていました。
――初めて来た日本の印象は?
ラミヤ 関西国際空港から、語学留学した大阪外国語大学(現・大阪大学)までの道のりはあまりに殺風景なビルばかりで。高速道路には無数の車が行き来し、「日本といえば」とイメージしていた四季折々の美しい風景が見えなくて、すごく落ち込んで泣いてしまいました。でも学校に到着すると、緑がたくさんあって、桜も綺麗に咲いていましたので、心が落ち着いたことをよく覚えています。
――日本では何を学んだのでしょうか?
ラミヤ 1999年に日本に来て、最初の1年は大阪で日本語を、その後、2000年から神戸大学工学部情報知能工学科でコンピューターやプログラミングを学びました。