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不透明な取引のうち、170億が未回収

 2016年3月29日、暴力団との関係を聞きこみ調査した第三者委員会は、93ページの調査報告書を発表した。反社会的勢力との関係はなかったとされたがマスコミは沸いた。九州出身の「A氏」と王将の間に、合計260億円もの不透明な取引があり、そのうち、170億が未回収と記されていたからだ。

 A氏は被害者の義兄である創業者と昵懇で、その次男とも数々の取引をしていた。マスコミが書き立てたこともあって、A氏は週刊誌の取材に実名で答え、暴力団相手のトラブルが起きた際、仲裁に入ったとも語られている。が、以降、捜査は進展していない。

 事件から5年後の2018年12月、発生当時の様子を調べようと考え、私も殺害現場を訪問した。社長が射殺された駐車場にフェンスやゲートは新設されておらず、ただ立ち入り禁止の看板だけがあった。本社の目の前にある住宅を皮切りに、手当たり次第呼び鈴を押した。京都の風土なのか、マスコミに辟易しているのか分からぬが、誰もが冷淡で取材拒否だった。

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(著者提供)

「とにかく犯人が捕まって欲しい」

 1時間後、とある家の女性がようやく口を開いてくれた。

「大騒ぎやったですよ。小学校は私たちが付き添って集団下校、警察のパトカーやマスコミがうろうろしてて、みんなびくびくしてました。とにかく犯人が捕まって欲しいです。どうなんですか? 犯人はみつかりそうなんですか?」

 その際、連絡先を教えてもらったので、今回、記事を書くにあたり、再度、電話取材を行った。頻繁にではないにせよ、やはり年末になると話題になるという。

 通常、見ず知らずの人間が殺されても、世間はすぐ忘れてしまう。これだけ関心を持たれる殺人事件はあまりない。それだけ「餃子の王将」が、市民に親しまれているのだろう。

 解決の糸口はきっと見つかる。遺族の無念を晴らして欲しい。