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未解決事件を追う

《「餃子の王将」社長射殺事件》京都府警が工藤会系組幹部の実行犯逮捕までに9年もかかった“本当の理由”

2022/10/29

「餃子の王将」社長を射殺した実行犯がついに逮捕された。王将フードサービスの社長だった大東隆行さん(当時72)が凶弾に倒れたのは2013年12月のこと。京都府警は10月28日、殺人と銃刀法違反容疑で工藤会系組幹部の田中幸雄容疑者(56)を逮捕した。

 しかし、この容疑者の名前はかねてから関係者の間では浮上していたという。では、なぜ逮捕までに9年もの年月がかかったのか。暴力団の動向に詳しいライターの鈴木智彦氏が内幕に迫った記事を再公開する。

(初出:2021/05/07、日付、年齢、肩書きなどは当時のまま)

10月29日、京都・山科署に移送された田中幸雄容疑者 ©共同通信社

◆ ◆ ◆

 2013年12月19日午前5時45分――。

 株式会社王将フードサービスの大東隆行社長(当時72歳)は、京都市山科区の本社駐車場に車を停めた。2000年に社長となってから、毎朝午前5時半から6時に出社するのが日課だった。ゴム長靴に履き替え、廻りを掃き清める。その後、周囲の道路に水を撒く。

「王将フードサービス」本社前(著者提供)

 京都・四条大宮の1号店からスタートした「餃子の王将」は、関西を中心に737店舗(2020年3月31日現在)を全国展開する巨大飲食チェーンである。大企業のトップが、冬場ならまだ暗いうちに出社し、率先して汚れ仕事を行う美談はかっこうのネタだ。実際、マスコミでも何度か取り上げられた。

「誰よりも早く一番乗りが大切。仕事は朝が勝負ちゃうのん? 意欲と勢いと活気でやるもんや」(『週刊ポスト』2013年12月13日号より引用)

 近隣住民にも社長の早起き・掃除はよく知られていたという。 

急所に命中していた4発の銃弾

 この朝も、いつものまめまめしい姿が見られるはずだった。が、車から降り立った直後、至近距離から25口径の小型拳銃が発射され、4発の弾丸が急所の胸や腹に命中した。脅しとは考えにくい。殺すつもりとしか思えない。午前7時、社員が昏倒する社長を発見したが、病院に運ばれ死亡が確認された。遺留品は4個の薬莢だけで、鞄や財布などは一切荒らされていなかった。車内に百数十万円以上あった現金も手つかずのままだ。

株式会社王将フードサービスの大東隆行社長(当時72歳)

 凶行の現場となった山科区は、観光客でごった返す京都市中心部とは違い、ひとつ山を越えたごく普通の住宅街である。とはいえ、JR京都駅から東海道本線に乗車するとわずか5分で山科駅に到着するほど近い。激坂のため自転車での行き来はしんどいが、原付バイクがあれば、市内中心部から容易に移動できる。通りに人がいない早朝、アクセスが簡単な現場、決まった時間に出社してくる社長……計画そのものは簡単だし、逃走もしやすい。

 新聞報道によれば、京都府警はこれまで延べ22万人を超える捜査員を投入し、現在も50人以上で捜査態勢を敷いているという。しかし、実行犯に繋がる決め手は、残念ながらみつかっていない。殺人事件は発生直後の捜査が明暗を分ける。もはや新情報はほとんどないだろう。迷宮入りになってもおかしくはない。