手袋にヘルメット姿でも不審に思われないバイクは常套手段
事件当日の防犯カメラには、不審な男がバイクに乗って立ち去る映像が残されていた。現場はカメラの死角のため、殺害の瞬間は映っていなかったが、直後、現場を離れる車の姿もあった。
物証や目撃証言が乏しいなか、事件の翌年4月には現場から約2キロのアパート駐車場に放置されている小型バイクが発見され、拳銃を発射した際に付着する硝煙反応も確認できている。近くには凶行の2ヶ月前に盗難された原付バイクもあって、ナンバーは別のものと替えられていた。
いっこうに捜査が進展しないため、外国人による犯行という見方も出たが、暴力団員らは「外国マフィアの犯行は先走りすぎ」と懐疑的である。京都市内に拠点を持つ山口組系幹部も、外国人ヒットマン説は考えにくいと話す。
「外国人を使って殺すなんて怖くてできない。それに金で雇った半端者は、しょせんその程度の繋がりしかないから、逮捕されればすべてを謳う(※白状する)。そんな危ない橋を渡るとは思えない。襲撃にバイクを使うのは襲撃の基礎中の基礎。手袋をして、顔の見えないヘルメットをかぶってうろうろしてても、誰も不審に思わない。おそらく現場近くに拠点があって、そこを根城にしていたんじゃないか。当日は動かず、一晩テレビを観て過ごし、ゆっくり寝て、それから逃走したはず」
自らが関与した抗争事件の経験から、そう推測しているという。相応の説得力はある。
福岡県警と京都府警の不仲
2016年春、京都府警は中古車ディーラーに並んでいた軽自動車が、バイクの盗難に使用された車両だと突き止めている。事件当時の持ち主は、容疑のかかった組員と同世代であり、出身もまた同じだったうえ、この軽自動車が九州を走っていた事実も判明している。
状況証拠はそれなりに揃っている。京都府警はここから実行犯にたどり着こうと必死の捜査をしている。
では、なぜ犯人が逮捕されないのか?
京都在住の暴力団幹部は、京都府警が失態を犯し、捜査停滞の理由になっていると話す。
「捜査一課の人間が証拠を紛失したらしいですわ。左遷されたと聞いてます。それなりの立場の人間です。それを聞いた福岡県警が『こんなにも適当な京都府警とは、一緒に捜査などできない』と激怒し、連携が出来ないらしい。工藤會のI組のTが実行犯ちゃうか、という名前まで俺らのところに伝わってきてるんやけど、福岡県警の協力がない限り、どないもならんでしょ。
無くした証拠……しばらくしてから出てきたんやと。でもひび割れた信頼関係は修復できん。『京都府警はたるい。ヤクザの取り締まりもだらしない。強硬な取り締まりで有名な大阪府警に、いっぺん研修いったらええ』なんてイヤミも聞こえてくる。そんだけ警察は縄張り意識が強いんですわ。ヤクザ顔負けのメンツが邪魔し、仲良うできんのやろうね」
どこまで信じていいのか分からないが、当の幹部は「これまで何度も情報交換してきた。間違いない」と自信たっぷりだった。