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一夜にしてSNSで何千人、何万人にフォローされるように

――しかし、そのアンドロイド役が大ハマリして注目されるように。

SAORI 本当、何があるかわからないですよね。ゲームショウに来場していた方が、アンドロイドを演じる私の動画をツイッターに投稿したらものすごく拡散されて。最終的にその動画は、1000万回以上再生されたんです。

 実はその時、アンドロイド役を演じていたのは私を含め10人いたんですよ。たまたま私がピックアップされたのは、運が良かったと思いますね。

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――売れないモデルだったのが、一夜にして注目を集める存在になった、と。

SAORI アンドロイドとして出てくれという依頼だったので、どんなに注目を集めても「私がモデルを務めました」とは言えない契約だったんです。でも、とんでもなく拡散されたことで、私だと知られてしまって。

 リアルな友達としかつながっていない、フォロワー数2ケタのSNSが突然、何千人、何万人にフォローされるようになって、本当に驚きました。

「第2の橋本環奈になれるよ!」ともてはやされて

――それからアンドロイドモデルとしての道が拓けていったんですね。

SAORI 売れない時代が長かったので、やっとチャンスが来たと嬉しかったです。当時所属していたモデル事務所からも、「第2の橋本環奈になれるよ!」ともてはやされて。コンプレックスだった「気を抜くと無表情になっちゃうクセ」も、アンドロイド役としてはむしろ重宝される。やっと自分を活かせる場所が見つかったとワクワクしました。

 実際、CMやミュージックビデオへの出演など、これまでにないような大きな仕事が次々と決まっていきましたね。でも、突然「アンドロイドモデル」という肩書だけをもらってしまった私は、まだ「売れる準備」ができていなかったんです。

――売れる準備とは?

SAORI アンドロイドモデルとして深掘りできるエピソードを何も持っていなかったんですよ。そもそも、トークや演技を専門的に学んだことがない。だから、いつか出たいと夢に見ていたテレビやラジオのお仕事をいただいても、いざ出演すると自分をうまく出せずに後悔ばかりしていました。

 例えばテレビやラジオに出演して、「アンドロイドモデルをやっています」と言うと「自動ドアが反応しないとか、何かアンドロイドっぽいエピソードないの?」とトークを振られたり。

 でも、アンドロイドモデルを始めて日が浅すぎるから面白いエピソードを持っていないし、うまく切り返すトークスキルもなかったんです。そこを補おうとアンドロイドに関する専門書を読み漁ったのですが、付け焼き刃の知識では、すぐに底が見えちゃって。だんだんと「昔バズったあの人」になる姿が見えてきて、焦っていました。