国内最大の暴力団「6代目山口組」が2015年8月に分裂し、離脱した「神戸山口組」との対立抗争は異例の8年目に入った。2015年末時点での6代目山口組の構成員は約6000人で、神戸山口組は約2800人だったが、2021年末になると6代目山口組の約4000人に対して、離脱組織が相次いだ神戸山口組は約510人となり圧倒的な差が開いた。さらに、2022年夏には神戸山口組の主要組織が離脱するなど、混乱が続いている。警察当局の捜査幹部は、「神戸(山口組)は迷走状態といっても過言ではない」と指摘する――。
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井上組長の引退と神戸山口組の解散を水面下で交渉
構成員の数で6代目山口組に8対1の差をつけられ、勢力が減少傾向の神戸山口組では今年8月、さらに組織が縮小する出来事があった。神戸山口組侠友会会長の寺岡修が神戸山口組組長の井上邦雄ら執行部によって絶縁処分となり組織を去ったのだ。絶縁処分にいたるまでの経緯について、組織犯罪対策担当の捜査幹部が解説する。
「神戸(山口組)側の勢力が減少していくなかで、(侠友会の)寺岡は事態の収拾のため、他組織の最高幹部も交えて水面下で交渉していたようだ。事態収拾とは(神戸山口組組長の)井上の引退と組織の解散だった。だが、井上は辞めるつもりはまったくなく、寺岡の排除に出た」
絶縁とは暴力団業界からの永久追放を意味する。通常、絶縁処分が出されたら、暴力団業界では「絶縁状」を回覧させる。ほかの暴力団組織が、絶縁処分となった人物と交流を持つことは、処分を出した組織に「敵対の意志あり」と見做されるため、回覧するのは注意喚起の意味もある。
「2度も絶縁になるとは聞いたことがない」
寺岡は神戸山口組を結成する際に井上らとともに6代目山口組から絶縁処分を受けていたため、今回、神戸山口組からの絶縁で2度目となった。分裂以降の動向を注視してきた首都圏に拠点を構える指定暴力団の古参幹部は寺岡について、「2度も絶縁になるとは聞いたことがない」との感想を漏らした。
「絶縁とはヤクザ社会での行動を許されないことを意味する。だから、1度でも絶縁になれば、ほかの組織の盃を受けて再びヤクザになることはできない。6代目(山口組)に公然と反旗を翻して、神戸(山口組)に参加したというヤクザの歴史の上でもあまりない出来事の渦中にいたから、2度の絶縁を経験することになったのだろう。異例なことだ」