旧統一教会の青年支部で1990年から1994年まで「献身(出家)信者」として活動していたジャーナリストの多田文明氏。当時20代の彼がそこで体験したのは、39度の高熱であっても布教活動を命じられる過酷な生活だった。当時の信者たちは、どんな気持ちで布教に励んでいたのか?

 多田氏の最新刊『信じる者は、ダマされる。 元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』より一部を抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)

かつて旧統一教会の信者として活動していたジャーナリストの多田文明氏(画像:本人提供)

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アイスクリームひとつ自由に買えない「出家生活」

 教団に身も心も捧げた行動は、本当に厳しいものです。私も東京の青年支部に1990年から1994年まで献身していました。睡眠時間は3、4時間です。食・住は面倒を見てくれるものの、月に渡されるお金(お小遣い)1万5000円ほどで、青年支部の金銭的事情が厳しいときには無報酬ということもありました。

 個人の思いからの行動は厳禁です。すべての行動は上(アべル)の許可を受けなくてはなりません。

 アイスクリームを買いに行くにも、「行っていいですか?」と聞かなければなりません。しかし、たいがい「行ってはダメ」と言われます。それは、「自分が食べたい」という動機がもとになっているからです。これが、もし「みんなにも食べさせたいから、買いに行く」であればOKは出ると思いますが、そうしたお金は手元にほとんどありません。

 何をするにも報連相が基本であり、上の許可を得て行動しなければならない。これが旧統一教会における信仰生活です。こんなこともありました。ほぼ毎日、終電近くまで繁華街での声がけを行うのですが、

 ある朝、39度以上の熱が出てしまいました。起き上がるのもやっとで、「体調が悪い」と上の人間に告げると、「サタンが心に入ったから風邪を引いた」と言われます。「サタンを追い出すために、外に出て勧誘活動をしろ!」と言われました。意識が朦朧とするなかで活動したこともあります。

 このように、病気や事故、ケガもサタンが侵入したためであり、本人の不信仰のせいであるとされます。こうした日が続いていくのです。このすべての行動は、合同結婚式への参加を目指すためのことです。