2016年8月16日、鹿児島県内の精神科クリニックに勤務していたA子さん(当時32)が自殺した。A子さんの遺族は「自殺の原因は院長のX氏によるセクハラとパワハラだった」と訴え、約2200万円の損害賠償を求めて民事訴訟を起こしている。

 この裁判に証拠として提出されているのが、A子さんとX氏の間でかわされた膨大なLINEのやりとりだ。携帯画面を接写したもので約2500枚にのぼるLINEには、X氏がA子さんに送ったあまりに性的な内容や、精神を追い詰める苛烈な言葉が並んでいる。「文春オンライン」取材班は、「X氏の実情を知ってほしい」というA子さんの遺族から画像の提供を受け、それらを掲載することにした。

2016年に亡くなったA子さん

 A子さんがX氏のクリニックに就職したのは2015年5月のこと。そしてX氏とのLINEのやりとりは同年6月6日に始まっている。X氏は妻子持ちだが、わずか数日で「大好き笑」「会いたくなりました。」のようなA子さんを口説く言葉を数多く送信している。

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 当初はX氏からのアプローチにA子さんが戸惑う様子が残っているが、翌7月頃には不倫関係になったようだ。この時期はX氏の言葉づかいも優しく「僕の腹心になってくれますか?」(2015年8月28日)などと公私ともに信頼を表明するような言葉が多い。

「しゃぶる?」「じゃあエロい格好で来てよ」

 しかし2015年の末頃には、とげのある文言の比率が増加していく。X氏からA子さんに対して「死にたい」と動揺を誘ったかと思えば、厳しい口調で叱責する。そして苛立つX氏に対してA子さんはひたすら謝罪し、「自分が悪い」と責任を感じる発言をするようになっていった。

A子さんとX氏のLINE。「エロい格好で来てよ」という言葉が見える

 そのようなギクシャクした状況でも、X氏の性的な要求はエスカレートしていた。2015年12月8日には、A子さんを午前3時にクリニックに呼びだし性行為をしたとみられ、勤務後の午後10時には、A子さんに怒りのメッセージを送っている。その前段のやり取りは以下のようなものだ。

2015年12月8日

X氏 今からそっちに行きます。なんだか誰も話したくない。(深夜0時11分)

X氏 結局寝てるんだよ(1時44分)

A子 ●●●●(垂水市のクリニック)に着いたんですか?(1時46分)

X氏 着いた(1時48分)

X氏 仕事するよ、(同)

X氏 一瞬起きただけでしょ、おやすみ。(同)

A子 一瞬じゃないです

   今から行ったら仕事の邪魔にならないですか?(1時52分)

X氏 こないでしょ(1時59分)

A氏 行きたいけど、先生イライラさせそう(2時)

X氏 しゃぶる?(2時2分)

X氏 嫌ならいいよ(2時3分)

A子 はい(同)

X氏 無理ならいいよ(同)

A子 イライラしないですか?(2時4分)

X氏 イライラされたくないの?(2時5分)

A子 はい(同)

X氏 怒られたくない?(2時6分)

A子 はい

   でも自分が悪い時は怒られて当然だと思います(2時7分)

X氏 じゃあエロい格好で来てよ。(2時9分)

 LINEのやりとりからは、A子さんがX氏に対して恐怖心と依存心を感じている様子が見てとれる。診断書などによると、この時期にはA子さんはすでにX氏から「強迫性障害」の診断を受け、診察と薬の処方を始めている。しかし深夜に呼び出し、睡眠時間を削って性的な要求をしたうえで、クリニックでも勤務させていることが分かる。