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母親の顔色ばかり見て育ったケースは危険…? 「不安型愛着スタイル」を助長してしまう“毒親”の代表的な特徴とは

『不安型愛着スタイル 他人の顔色に支配される人々』より #2

2022/11/27

genre : ライフ, 社会

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 自分としては、相手との関係を大事にしようとしていたことが、こんな形で返ってきたことに、すっかり自信をなくしている。

 それだけの情報だと、同僚からのハラスメントによる適応障害のケースだといえるだろう。実際、会社をひとまず休むことにして、順調に回復していたのだが、それですんなりとはいかなかったのだ。適応障害であれば、仕事を休むことで回復するのが普通だが、彼女の場合は、ときどき悪化してしまうのだ。

こうしなさい、ああしなさいと言うだけ

 話を聞いていると、悪化のきっかけとなるのは、たいてい母親がやってきた後だった。通常ならば、母親と会っていろいろ話をすれば、いっそう気持ちが楽になるものだが、彼女の場合は逆だった。母親に会う前から緊張感があり、母親に会うと、その態度や言われたことによってもやもやした思いが強まり、すっかり落ち込んでしまうのだ。

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 麻奈美さんは小さい頃から、母親の自慢の娘で、麻奈美さんも母親を尊敬していて、何事も母親の意見に従ってきたという。だが、結婚した頃から、母親の考え方に違和感や反発を覚えるようになった。

 それでも、母は娘のことを誰よりも考えてくれて、一番いいと思うアドバイスをしてくれているのだと思おうとした。しかし、母が夫の悪口を言ったり、子育てに口をはさんでくるようになると、話をするたびに、ほっとするよりもイライラや不快さが募るようになっていた。

 考えてみると、母は麻奈美さんの話をただ聞いて、大丈夫、よくやっていると、そのまま肯定してくれたことが一度もなかった。娘の話を聞くよりも、ただ正しいことを教えようと、こうしなさい、ああしなさいと言うだけだった。

 そんな母と会うと、気が楽になるより、かえって気疲れしてしまうので、母に頼ることを避けるようになった。母に手伝ってもらうのが嫌で、子どもができて大変なときも自分一人で何とかしようとしていたということも、疲れてしまった一因だった。

©iStock.com

初めて母親の意見に逆らい、自分に合った働き方を選択

 しかし、母が来ると、余計に落ち込むようなことが起きる。調子が悪くなり、休みがちになってからも、「仕事はやめない方がいい」とか、「やめたら、あんないい会社の社員にはもうなれないよ」とか、逃げ道をふさぐようなことを言うのだ。

 母は、娘の健康や精神状態よりも、世間で一流と呼ばれる会社の正社員でいることの方を優先するのかと思い、そう思うと、これまでに母親から言われたり、されてきたことが、いつも麻奈美さんよりも母親の基準を押し付けることだったなと思えてくるのだった。

 それに従うしかないと自分を殺し、相手に合わせる生き方をしてきたことが、ハラスメントにもはっきりとノーと言えないことにつながっているように思えてきたのだ。

 その後、麻奈美さんは、初めて母親の意見に逆らって、会社をやめ、もっと自分に合った働き方をすることを選んだ。

※事例については、実際のケースをヒントに再構成したものであり、特定のケースとは無関係です

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