比較的軽度な「愛着障害」の一つとして、昨今注目を集めている「愛着スタイル」という言葉をご存知だろうか。特徴は、人の顔色や気持ちに対する敏感さ、傷つきやすさ、安心感・自己肯定感の乏しさなど。そうした精神状態を一因に、職場や家庭で良好な関係が築けない等の悩みを持つ人が少なくないのだという。
ここでは、そうした愛着スタイルのなかでも「不安型愛着スタイル」を持つ人への対応、克服や治療法を紹介した『不安型愛着スタイル 他人の顔色に支配される人々』(光文社新書)の一部を抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)
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顔色や相手の反応に敏感
不安型愛着スタイルとは、一言でいえば、愛着不安の強い状態だといえる。愛着不安とは、通りすがりの関係や見ず知らずの他人との関係とは違って、距離が近づいた関係になったときに、相手に対して感じる不安のことである。
親しさの程度は、ただ見知った関係である段階から、親密な家族や愛する存在の段階まで幅広いが、相手の反応や自分に対する関心を気にして不安を感じるという点で共通している。
愛着不安は、たとえば、攻撃や危害を加えられるかもしれないという恐怖心や警戒心とは違い、相手の評価や自分に対する関心についての不安である。言い換えれば、自分のことを相手がよく思ってくれているか、それとも悪く思っているか、自分のことに関心があって、何らかの価値を見いだし、有用だと感じているか、それとも、何の価値もない存在で、むしろ邪魔だと思っているか、あるいは、まったく自分に対して無関心で、何とも思っていないか、といったことに対する不安である。
自分の気持ちよりも相手にどう思われるかばかりを優先
愛着不安が強い人にとって、相手の自分に対する評価が否定的なものだと感じることは、自分の存在を揺るがすような不安を引き起こす。しかも、愛着不安の強い人は、愛着不安を感じてしまう対象の範囲が広い。自分の現在の生活や将来を左右しかねない、本当に重要な他者に対して愛着不安を覚えるだけでなく、実際には何の影響力も持たない存在や、そうした配慮、心配をする必要がない存在に対してまで、まるで相手が重要な存在であるかのように、その人の反応に対して愛着不安を掻き立てられてしまう。
たとえば、自分に商品を売り込もうとしている営業マンや、自分をたぶらかし、都合のいい遊び相手やお客や働き手として利用しようとしている相手に対しても、顔色や反応を気にし、相手が気を悪くしないか心配になったり、気に入られようとつい甘い返事をしてしまう。