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 上司や同僚が、いつもより素っ気ない態度を取ったり、不機嫌だったりすると、自分のことを嫌っているのではないかとか、自分が何か原因になることをしてしまったのではないかと心配になり、その日一日そのことばかりが気になって、他のことが手につかなくなってしまう。

心理的な支配を受けやすい

 愛着不安は、相手に見捨てられはしないかという不安でもあり、相手の機嫌を損ねないかという不安でもある。ありのままの自分をさらけ出し、自分の考えを主張することに、恐れや不安がある。相手を傷つけたり、相手に悪く思われてしまうことが心配で、自分の気持ちや考えをはっきり言うことを遠慮してしまう。

 そのため、愛着不安が強いと、態度が曖昧になりやすい。はっきりノーと言うことができず、煮え切らない言葉で、どっちつかずの返事をしてしまう。その結果、自信たっぷりで、押しの強い相手に対しては、ずるずる引きずられてしまいやすい。

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 また、こちらをあまり評価しない、点数の辛い相手に対したとき、自分を評価してくれないことに不安を刺激され、何とか相手に自分を評価してもらいたい、見捨てられないように相手にしがみつきたいという衝動が掻き立てられる。

 ずけずけと自分の欠点を指摘したり、遠慮なく言いたいことを言ってくる点数の辛い相手に対して、最初は反発や不快感を覚えていたにもかかわらず、いつのまにか言いなりになってしまったり、親密な関係になったりして、心理的な支配を受けやすいのは、愛着不安が刺激されることで、相手に取り入ろうとするスイッチが入ってしまうためである。いい人と思う人に惹かれるよりも、むしろ嫌なやつと思った相手の手中に落ちてしまうのは、愛着不安がからむ心理的メカニズムのなせる業だ。

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 教え子がコーチや教師に惹かれたり、部下が上司と恋愛に陥ったりするときの心理にも、しばしばこの心理的力動が関わっている。

厳しいはずの上司の意外な親切に──亜佑美さんのケース

 亜佑美さん(仮名)の、上司となった課長の岳田(仮名)に対する印象は、仕事に厳しい人というものだった。岳田は40代の初めの男盛り、亜佑美さんも30代の半ば、結婚7年目の夫との間には小学校に上がったばかりの娘がいた。