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母親の顔色ばかり見て育ったケースは危険…? 「不安型愛着スタイル」を助長してしまう“毒親”の代表的な特徴とは

『不安型愛着スタイル 他人の顔色に支配される人々』より #2

2022/11/27

genre : ライフ, 社会

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(2)自分が中心でないと機嫌が悪い母親

 もう一つは、母親が、自己愛性の傾向を強く持っている場合だ。

 不安定な傾向はなく、むしろ自信に満ち、実際に能力や学歴、社会的ステータスや職業、容姿や立ち居振る舞いの点でも優れていることも多く、第三者的には「立派な親」「魅力的で、羨ましい存在」と映ることも多いのだが、もっと近くで接すると、何事もその人が中心に回っていないと気が済まず、その人のことが少しでも後回しになったり、ないがしろにされたりすると、不機嫌になり怒り出す。

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 そうした存在が父親であっても、いろいろ問題が生じやすいが、母親であった場合には、子どもはもっと愛情不足や関心不足を味わいやすい。子どもが輝けるように支えとなるよりも、母親自身が輝いていたいという思いが強いため、知らず知らずのうちに子どもの方が脇役の地位に置かれてしまう。

自己愛の強い親は、不安型愛着スタイルを助長してしまう

 子どもと競い合いそうになったとき、親の方が子どもに「主役」の地位を譲ることが、子どもの自己愛の健全な成長には必要だが、親の方が「主役」の地位に居座り続けてしまう。

 自己愛性の強い母親が機嫌を損ねると、後で面倒なことになりやすいため、子どもたちも賞賛する側に回り、母親の機嫌や満足を優先するようになる。子どもの満たされない自己顕示欲求は、自信のなさや自己肯定感の乏しさとなるか、歪に肥大した形で、大人になった後も引きずられてしまいやすい。

 自己愛の強い親は、相手への共感に欠け、冷たい面を見せがちで、子どもは関わり不足から回避型になる場合もあるが、親が自分の理想や基準にかなったときだけ賞賛してくれ、それ以外のときにはそっぽを向くという対応になると、愛されたいのに愛されないという葛藤が強まり、不安型愛着スタイルを助長してしまう。

サガンの愛情飢餓と母親との関係

 18歳のときに初めて書いた小説が、空前の大ヒットとなり、一躍スター作家となったサガン。電力会社の重役である父親を持ち、恵まれたブルジョア家庭に生まれ、三人兄弟の末っ子として特別に甘やかされて育った、人も羨むようなラッキーガールが、なぜアルコールや薬物、そして身を滅ぼしかねないスピード狂やギャンブルに溺れていかねばならなかったのか。

 サガンの孤独と愛情飢餓の根源は、母親との関係にあったようだ。母親は、外から見る限りでは、理想的な母親とも映るのだが、決定的な一つのことが欠けていた。彼女はあまり子育てに関心がなかった上に、サガンには、特に関心が持てない理由があった。サガンと上のきょうだいとの間には、少し年齢が離れているが、実はその間にはもう一人兄がいたのだ。

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