世界中で大ヒットしているインド映画『RRR』が日本でも話題になっています。なんと日本で公開されたインド映画史上最速で興行収入2億円を突破し、一大旋風を巻き起こしているのです。その様子はSNSにとどまらずテレビや新聞、雑誌などのメディアにも登場しているので、気になっている方もいることでしょう。
『RRR』の舞台は1920年。第一次世界大戦後、英国植民地時代のインドです。
英国軍に誘拐された少女を助けようとデリーに潜入するビーム。大義のために英国政府の警官になったラーマ。使命を持った二人が出会ったとき、運命が大きく動き始めます。
実は二人のキャラクターは、実在したインド独立運動の英雄をモデルにしています。こう書くと「歴史の話は難しそう」と尻込みする人がいるかもしれません。
でもどうかご安心を。『RRR』はフィクションです。インドの歴史を全く知らなくても楽しむことができます。何も知らずに映画館に行って『RRR』を観たとしても、素晴らしい体験ができるはずです。
そうはいっても、やはり舞台となる背景を知りたいという人のために、簡単ではありますがインドの歴史や文化をご紹介しようと思います。
「イギリス人以外は観て」と言われる理由
『RRR』が公開された直後から、SNSでは日々『RRR』への熱い感想が溢れています。中には「イギリス人以外は観て」という書き込みも多くみかけました。
その理由の一つは、映画の悪役が英国人だからだと思います。欧米の映画では正義の側として描かれる英国が悪役なのは、目新しいのかもしれません。
インド映画で英国が悪役なのは、植民地時代の英国の統治が現代の価値観では非人道的だったことと関係しています。歴史をふまえると、フィクションとはいえ悪役の英国人が登場するのは仕方がないことだと思います。
書き込みをした人たちは「英国人が悪役なのは辛い描写なのでは?」と気遣ったのかもしれません。
しかしそんな心配をよそに、『RRR』は英国でも大ヒットしたそうです。
私は英国の事情はわかりませんが、ヒットした理由の一つには、映画の中で一貫して描かれる「人間の尊厳を踏みにじる行為は許されない」という現代人にとって共通の感覚が関係しているのではないかと思いました。
誘拐された少女を助けるため戦うビーム。心の奥に闘志を秘めたラーマ。
尊厳を守るために全力で戦う主人公たちは、国を超え、人々に感動を与えるのではないでしょうか。
それに、映画の中には、協力的で優しい英国人も登場します。英国人全てが悪いわけではないところもバランスがよいのかもしれません。
では、英国の支配下にあったインドでは、どんなことがあったのでしょうか。