たしかに『RRR』は独立運動で活躍した英雄たちへのリスペクトに満ちた映画とも言えます。でもそれが全てではありません。
何度も言いますが『RRR』はフィクションです。1920年という時代設定はありますが、主人公のモデルとなった人物たちが出会ったという事実はなく、映画のストーリーも完全に史実通りというわけではありません。物語の展開も、潔いほどエンターテイメントに100%振り切っています。
また、『RRR』は古代インドの二大叙事詩『ラーマーヤナ』と『マハーバーラタ』のストーリーを巧みに取り入れています。知っている人ならだれでも、主人公であるラーマとビームの名前を聞いただけで、これらの叙事詩の二人の英雄を思い浮かべることでしょう。
『ラーマーヤナ』のラーマ王子は、魔王ラーヴァナにさらわれたシーター妃を助ける英雄です。『マハーバーラタ』のビーマ王子は力持ちで頼もしい存在です。
もちろん叙事詩のストーリーを知らなくても、彼らが英雄になる瞬間は、説明がなくても誰でもわかります。彼らの活躍を映像で感じることができます。そこがこの映画の素晴らしさだと思います。
『RRR』は歴史に忠実なだけの映画ではない?
私は当初、『RRR』は歴史に忠実な映画だと思いこんでいたので、映画を観たときはあまりの展開に度肝を抜かれました。歴史上の人物の活躍を追いかけていたはずが、いつのまにか神話の英雄を目撃することになってしまったからです。
観終わったあと、思い違いも甚だしいと反省しました。あの『バーフバリ』シリーズを手掛けたラージャマウリ監督が、史実をなぞっただけの映画を作るはずがないのです。
『RRR』はラージャマウリ監督が創作したもう一つの歴史、IFの世界です。そう思うと、エンドロールを思い出しただけで心が躍ります。
まだ『RRR』を観ていない方は、ぜひ大スクリーンで観てください。二人の熱い友情と宿命を描いた壮大なスケールの物語を体験できます。観終わったあとに映像の衝撃にフラフラになりながら笑顔になってほしいです。
そしてもし余裕があれば、この映画が作られたインドという国に想いを馳せていただけると嬉しいです。