ロシア軍の士気の低さ、5つの理由
虎の子の精鋭は隠し、一般の国民が動員されて前線に送られている可能性があるのだ。一度、動員されると戦場から逃れるすべはない。逃亡や降伏ができないように、忠誠度の高い部隊が兵士たちを監視している。
「ウクライナ東部ルガンスクでは戦いを拒否したロシア兵約140人が、刑務所より頑丈な鉄の扉の部屋に押し込められた。別の地域ではアスファルトに一晩寝かせられ、上官から首に機関銃を押し付けられ脅された事例もある。ウクライナが立ち上げた逃亡兵向けのホットラインには開始3週間で2000〜3000人のロシア兵からの相談が相次いだといいます」(中村氏)
ロシア軍の士気の低さについて、関口氏は、5つの理由があると分析する。
(1)敗戦続きで指揮官の命令を信じられない
(2)編成、装備、訓練が十分でないため、戦闘に没入できない
(3)日常生活の場からいきなり戦場へ連れていかれた兵士もいて、部隊の強固な団結が醸成されていない
(4)ウクライナやその他の国の心理戦(反戦やロシア軍の被害状況などのプロパガンダ)が効いている
(5)ロシア・ロシア軍が持つ人命軽視思想が、今の時代の若者たちに符合しない
プーチンの語りはロシアの若者に響いてなかった
プーチンは大統領就任後、2005年ごろから愛国主義の柱として第二次世界大戦の犠牲者を顕彰してきた。第二次大戦でのソ連の民間人を含む犠牲者は2700万人とされる。拓殖大学特任教授の名越健郎氏が話す。
「プーチンは、『ソ連の兵士は世界とドイツの人々をファシズムという疫病から解放した』と語り第二次大戦を国家団結のイデオロギーに結び付けて語ってきました。歴史教科書もこの考えに基づいて改訂されています。しかし、動員令発表後に起きた20万人を超える大量出国からもわかる通り、ロシアの若者には響いていなかったのが事実です」
新兵を投入しても劣勢を押し返すには至らず、ウクライナ側の反撃は続くとの見方が強い。ロシア国内では、近く全国に戒厳令が敷かれ、さらなる動員が行われるとの噂が広がっており、動揺が収まる気配はない。