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ボロボロの防弾チョッキを持ったロシア兵の写真

 新兵が投入されているが、状況は開戦時よりも過酷だ。10月半ばには、SNS上に、テープで補修したボロボロの防弾チョッキを持ったロシア兵の写真が拡散した。別のロシア兵は、「軍隊には何もなかった。装備は自分で買わざるを得なかった」と西側メディアの取材に答えた。

「徴兵が決まってからネットであわてて装備品を買ったケースもあるようです」(山田氏)

ボロボロの防弾チョッキを見せるロシア兵(テレグラムより)

 配属されても自分が向かう戦場の事はロクに聞かされない。中村氏がある兵士の悲劇を紹介する。

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「最近、新兵の証言がロシア語で広まっています。〈私たちは草原にまるで犬のように捨てられた〉と題するもの。〈カラシニコフ(小銃)と刃物だけ受け取って、草原に送り込まれた。他の装備はない。自分がどこにいるのかもわからないし、指揮官もいない。何をすればいいのかよくわからない〉〈同僚は体調を崩して血を吐いているが、薬もない。いつ敵の攻撃を受けるかわからない。夜は0℃を下回る寒さで、草原で眠る。針の筵にいる心地だ〉というのです。これをもはや軍隊とは呼べません」

 新兵に施される訓練は「長くても1週間程度との証言が多い」(同前)という。軍事研究家で陸上自衛隊の予備一佐でもある関口高史氏はこう解説する。

「国によって事情は違いますが、一般の人が戦える兵隊になるには平時3カ月、有事でもひと月は必要です」

貧弱な武装のロシア軍と最新兵器で武装したウクライナ軍

 ウクライナ国防省は、〈新兵の一部は、要所ヘルソンの市街戦に備えた「砲弾の餌食」として配置される〉と公表し、ロシア軍に揺さぶりをかける。冒頭の写真の兵士も間もなくヘルソンへ送られるとみられる。

「彼らは貧弱な武装のまま、欧米の最新兵器で武装したウクライナ軍と対峙させられ、これから大量に戦死するでしょう。塹壕に隠れるロシア兵たちは、ウクライナのドローンに上空から監視されています。位置が捕捉されて砲撃され、無残に倒れているのです」(前出・黒井氏)

ウクライナ・ゼレンスキー大統領

 しかし、ここまでのロシア軍の苦戦は、予想外でもあったとするのは、関口氏だ。

「攻撃第一主義を掲げるロシア軍ですが、最近では攻撃もままならず、防御でも苦戦している。これには驚きました。ロシア軍はハイテク化していたはずなのに、当初から最新武器の取り扱い、戦い方(電子戦やドローン戦術)に不慣れな兵士があまりにも多い印象です。空挺部隊など精強な部隊が実戦に投入され失敗を続ける中、新たに動員した兵士を前線に送ったとしても、十分な戦果を獲得できるとは思えません。精鋭部隊を温存しているのか、他の理由があるのか。現時点では見えてきません」