国際ロマンス詐欺の被害が急増している。国民生活センターに寄せられた相談件数はコロナ前に比べて40倍に増加。なかでも最近多いのが仮想通貨への投資を勧誘する手口だという。
なぜ一度も会ったこともない相手に大金を騙し取られてしまうのか。詐欺師はどんな手口を使うのか。今年6月にロマンス詐欺の被害に遭い、老後のために蓄えていた6000万円以上のお金を失った女性に話を聞いた。(取材・文=押尾ダン/清談社)
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「あなたは魅力的だ」と甘い言葉を囁く詐欺師
国際ロマンス詐欺とは、外国人を装い、SNSを通じて「愛している」などとメッセージを送り、恋愛感情を抱かせてお金を騙し取る手口のことだ。中高年女性が被害に遭うケースが多い。
日本にきて30年以上になる横浜在住の中国人女性、王紅花さん(仮名、50代)も国際ロマンス詐欺に遭い、大金を騙し取られたひとりだ。王さんは詐欺師との出会いをこう振り返る。
「今年6月に久しぶりにフェイスブックを開いたら、友だちリクエストがたくさん来ていて、4~5人を承認したんですね。そのなかのひとりが20代の中国人男性を名乗る詐欺師でした。男のプロフィールを見ると、JPモルガンに投資アナリストとして勤務していると書いてあり、それでつい信用してしまって……」
タイミングを見計らって男が勧めてきたのは
JPモルガンは誰もが名前を知っている世界有数の金融サービス企業。老後のために株式やFXに投資していた王さんは、「JPモルガンの人なら投資のアドバイスをしてくれるかもしれない」と思い、男とメッセージのやり取りをするようになったという。
ちなみに男とのやり取りはフェイスブックではなく、男の提案によってLINE上で行われた。相手にLINEで連絡するように誘導するのも国際ロマンス詐欺の特徴のひとつとされる。
「その男はすごく口がうまかったです。ほぼ毎日のようにLINEをしました。そのなかで『自分とは、生い立ちや経歴がよく似ていて、魅力的な女性だと感じる』『僕と付き合ってほしい』と繰り返し言ってきたのです。私が『歳が離れすぎているから無理よ』と断っても、『男と女に年齢は関係ない』という甘い言葉を囁いてきました」
それだけ好意を示されれば誰だって悪い気はしない。やがて王さんはその男を信用するようになり、そのタイミングを見計らったかのように男がすすめてきたのが仮想通貨の取引だった。