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2022/11/24

genre : ライフ, 社会, 国際

総額6000万円以上を騙し取られた

「じつは私、以前にFXの投資で失敗して、わりと大きいお金を失っていたんですね。あるときにその話を男にしたら、『そのくらいの金額ならすぐ取り戻せるよ』と仮想通貨の取引をすすめてきたんです。『僕の指示通りにやれば大丈夫』『仮想通貨で大儲けして、2人で世界中を旅行して楽しく暮らそう』って……」

 男に紹介されたのは「C」という実在する大手仮想通貨取引所のオンラインサービス。王さんは男から指示された通り、取引所に口座を開設して、とりあえず350万円を入金した。

「さっそくその日の夜、男がLINEで指示してくる通りに仮想通貨の取引をしたら、たったの数分間で3000ドル以上の利益を出すことができた。すると男が『350万では儲けも少ない。大きく儲けるために2000万入金して』と言ってきたんです」

 小さく儲けさせて、さらに大きなお金を引き出そうとするのもこの手の詐欺の常套手段。とくに仮想通貨は利益がデータで示されるので、それを見れば儲かっているような気分になる。

 結局のところ、王さんは「老後は儲けたお金でハワイに土地を買ってふたりで住もう」といった甘い言葉で男に説得され、言われるがまま2000万円を振り込んでしまったのである。

「次の取引では4万8000ドルの利益が出ました。しかも、『本当に出金できるの?』と聞くと、男は実際に1万ドルを出金して私の口座に振り込んできた。それで安心したこともあり、その後もさまざまな口実で男から追加を要求されるたびに振り込んでしまい、最終的に6000万以上を騙し取られてしまったんです」

兄に「それ詐欺だよ」と言われ……

 王さんが詐欺だと気づいたのは、たまたま家に遊びにきたお兄さんに「それ詐欺だよ」と言われたときだったという。

「ハッと我に返りました。たしかに、振り返ってみるとおかしな点がたくさんあったんですが、その男のことを信じたかったんですよね。とにかく、すぐに男とのLINEをスクショしたり、取引所とのやり取りをコピーしたりして、警察に行きました」

 警察の捜査によってわかったのは、王さんが口座を開設した仮想通貨取引所が「偽サイト」だったという事実。それも、その偽サイトは本物の仮想通貨取引所とロゴやサイトのつくりが何ひとつ変わらない、極めて精巧で大がかりなものだったという。