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どんどん人が死ぬ『鎌倉殿の13人』…実朝もそろそろ? 実朝役・柿澤勇人(35)が語る、“哀しい状況”になってしまった理由とは

2022/11/20

 以前筆者が「プラスアクト」2020年4月号で柿澤にインタビューしたときに聞いた話によれば、柿澤の演じた『メリー・ポピンズ』(18年)の煙突掃除夫バートを見たときに三谷は自身のシャーロック・ホームズとリンクしたと感じたと柿崎に話したそうだ。

『愛と哀しみ~』の公式サイトで三谷はこうコメントしている。“風変わりで、天真爛漫で、天才肌で、自己中心的で、尊大で、ナイーブで、心に闇を秘めている、若き名探偵。そんな人物を演じられるのは、若い頃のレオナルド・ディカプリオか、今の柿澤さん以外には考えられません”。柿澤はディカプリオと並べて語られているのである。

『愛と哀しみのシャーロック・ホームズ』ホリプロ公式サイトより

 天真爛漫だけど闇がある役を演じたら天下一品の柿澤。実朝も源氏の嫡流で(頼朝の自称説もあり)家柄が良く、知性的で、でも、時々ふと憂いを覗かせる。そういうまだらな面を演じる素養を柿澤はいつどんなふうにして持ち合わせたのか。

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夜神月、森蘭丸、カンチ…俳優・柿澤勇人の陰影

 柿澤勇人は1987年、神奈川県出身。歌舞伎の演奏家・清元の家に生まれ、祖父と浄瑠璃の語り手である曽祖父が人間国宝で幼い頃から伝統芸能に触れて来た。が、本人はそちらの世界には進まず、劇団四季に入り、ミュージカル『ジーザス・クライスト=スーパースター』でデビューし、退団後は、舞台を中心に活動してきた。『デスノート THE MUSICAL』では夜神月役を演じている。

 以前行ったインタビューで柿澤は蜷川が演出した村上春樹の小説の舞台版『海辺のカフカ』(12年)のカラス役をやるまでは汚れのない美しい声で歌うミュージカル俳優であったが、カラスを演じるに当たって、人の心の闇を見つめるようになったと話していた。

舞台『海辺のカフカ』で柿澤(左、上から2番目)は「カラス」をという役を演じた ホリプロサイトより

 柿澤勇人の演技の主成分は、伝統芸能と劇団四季とミュージカルと蜷川幸雄と三谷幸喜でできていると前述したが、この5つだけでなく、様々な作品との出会いが柿澤に陰影をもたらしたのであろう。

 大河ドラマでは『平清盛』で後白河法皇の子・以仁王役、『軍師官兵衛』で森蘭丸役、と過去の大河ドラマでも悲劇的な人物を演じている。朝ドラこと連続テレビ小説『エール』では藤山一郎をモデルにした人物を演じ、モデルの独特の歌声にみごとに寄せた歌を披露した。

 歌ったり踊ったりはお手のものなのでエンタメ要素の強い作品には欠かせないうえ、人間国宝を身内に持つ家柄の良さが時代劇の風雅な人物に合っているのである。

 ちなみに、11月27日から上演されるミュージカル『東京ラブストーリー』(原作:柴門ふみ)で柿澤はかつてドラマ版で織田裕二が演じたカンチこと永尾完治を演じる。

 それに当たり柿澤は、「これまでの僕が演じてきた役は、いろいろなアイデアやプランを仕掛けていくことが多かったので、今回は、リカや三上の出方によってリアクションやセリフの言い方が変わっていくことはすごく楽しみですね、役者として」と「プラスアクト」22年12月号で語っているほどで、俳優としては仕掛けていくタイプという自覚があるようだ。

源実朝 『鎌倉殿の13人』NHK公式サイトより

 ところが実朝の場合、今のところ受け身な印象である。そういう役柄だからそうなるわけだが、これまで彼が演じた役を振り返れば、人物の個性や能力を強く押し出してくる役が多い印象がある。

 それに比べて実朝は心情や能力を内に秘めて抑制している。だからこそ、これまでの実朝のイメージであった能力のない3代目的な面とはまた違う、何か能力を持った人物に見えるのだ。