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合コンに行ったら、そこにいたのは“男装女子”でした…宝塚歌劇の男役が「笑われる」居心地の悪さ――青木るえか「テレビ健康診断」

『合コンに行ったら女がいなかった話』(カンテレ)

2022/11/21
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『合コンに行ったら女がいなかった話』は、大学生が誘われて合コンに行ったら、そこにいたのは男装女子。男装バーでバイトしてる大学の同級生だった! どひゃー! 彼らと、男装彼女らはこれから……!?

 というストーリーなんですけど、深夜の30分ドラマ、ということで想像してもらえたらだいたい想像通りです。ドタバタのハチャメチャ。『エルピス』で話題のカンテレ制作ですが、あれもドラマ、これもドラマ。

 私はここに出てくる「男装女子」たち3人にひっかかっている。

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 全員元タカラジェンヌ、バリバリの男役。主人公の「蘇芳(すおう)」は現役時代は三番手格ですごい人気だったし、BL同人誌を描いてる(が、見た目はカンペキなダンディ)という設定の「藤」は二番手で退団公演ではサヨナラショーまでやっている(サヨナラショーをやらせてもらえるのはタカラヅカ的にはものすごい地位の高さです)。

©iStock.com

 で、そういう彼女たちが、こういうところに「降りてきた」のでけっこう衝撃を受けている。「い、いいのか?」と、なぜかオロオロしている私。

 世間では「男装バー」とか「男装アイドル」なんてものがすでにある。「男装」と宝塚歌劇の「男役」って、似て非なるものだと思っている。男役は(劇場の大きさという物理的な距離として)遠くから見るもので、そのためにあの舞台化粧と、キザッキザな仕草としゃべり方と発声と補正衣裳と照明で武装して、ステージ上ではぜったい「男役であること」を崩さない。あれが自宅の居間に来たらぎょっとしますよ。男役が女の扮装することはあるけど、それもまた「男役が扮しております」をみんなわかっている(男の女装にしか見えなかったりする)。舞台を降りたら、ビシッとキメてカッコいいとはいえ、あくまでオフの人だ。

 対して「男装」は、バーとかライブハウスとか、至近距離で接するもので、カッコつけるのもネタ含みというか、「接待業」に近いといったらいいか。

 そういう「男装接待」をガチの男役だった人が演技としてやった時にどうなるか。「新たな男装シーンを創出!」になるのか。

 私には「宝塚歌劇の男役というものの、根源的なヘンさ(悪口ではないです)」が暴かれたようでなんかすごく居心地が悪かった……。劇中で男役の仕草を超カンペキにやればやるほど、それは笑われる場面になるという構造、「宝塚大劇場ではこれを大マジでやってるんだぞ。劇団として、これはいいのか」なんてことまでつい思ってしまうが3人とももう退団してるから何をやったっていいのだが。あ、そしてお三方、スタイルは超絶に良かった。でもそうなるとまたこんどは男優がかすむんだよね……。

INFORMATION

『合コンに行ったら女がいなかった話』
カンテレ 木 24:25~
https://www.ktv.jp/goukon/

合コンに行ったら、そこにいたのは“男装女子”でした…宝塚歌劇の男役が「笑われる」居心地の悪さ――青木るえか「テレビ健康診断」

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