マグロ漁船での過酷な生活やブラック労働の実態について紹介するYouTubeチャンネル「元マグロ漁船員チャンネル」。動画投稿者の菊地誠壱(せー)さんが初めてマグロ漁船に乗ったのは17歳の時だ。親が自営業で5000万円の借金を抱え、その返済が目的だったという。
ここでは、菊地さんが自身の経験をまとめた本『借金を返すためにマグロ漁船に乗っていました』(彩図社)より一部を抜粋。初めて乗ったマグロ漁船の船内や、つらい船上生活について紹介する。(全2回の1回目/遠洋編に続く)
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居心地の悪い船内
船内の部屋を簡単に説明すると、まず船内にはサロンと呼ばれる食堂があります。テーブルと長椅子2つが設置されていて、テレビがついています。そこでお茶を飲んだり食事をしたりします。休憩室兼食堂みたいな感じですね。中にはタバコを吸っている人もいます。
サロンから階段をかがんで降りると、全員分の寝台が並んでいます。カプセルホテルみたいな感じの広さだと思ってください。端っこに私の寝台があり、隣では甲板長のボースンが寝ていました。
長さ180センチ、高さ80センチくらいで、かなり天井が低く圧迫感があります。寝返りを打つのがやっとの幅で、寝台から足を出さないと狭くて座ることはできません。
休み時間になるとサロンに数人集まって、みんな雑談したりテレビを見たりくつろいだりしているのですが、1年生の私は寝台から出ずに引きこもっていました。というのも、おんちゃん(編注:著者の伯父)が怖い顔をして「せー、ちゃんとやれよ!」「何! おめー10年早えーわ!」とか人前で注意してくるので、たまらなく嫌だったのです。サロンに行ってもぐちぐち文句を言われるのはわかりきっているので、行かないほうがいいと思っていました。
当時は仕事を覚えるのも大変で、おんちゃんに毎日怒られるし、他にも嫌な感じの人もいるし相談もできない状態で本当につらかったです。
今でこそおんちゃんには本当に感謝していますが、当時は「コック長なんてほぼほぼ飯炊き係のくせに。船員としては別に尊敬してねえわ」なんて思っていました。
こんな環境で1か月暮らすのは本当に最悪だと思いました。今でもマグロ漁船のサロンとか寝台とかを動画で見ると、トラウマで憂鬱になってしまいます。