八百長、賭博、かわいがり、裏社会とのつながり……。元関脇・貴闘力が角界のタブーに切り込んだ書籍『大相撲土俵裏―八百長、野球賭博、裏社会…相撲界の闇をぶっちゃける』(彩図社)が発売より好評を博している。

 15歳で元大関・貴ノ花の藤島部屋に入門し関脇まで上り詰めるも、2002年9月場所で現役を引退。自身も現役時代に賭博に手を染めた経験がある貴闘力が10年の沈黙を破って明かした相撲界の悪しき風習。その告発の一部を抜粋し、転載する(転載にあたり一部編集しています。年齢・肩書等は取材当時のまま)。

(全6回の1回目)

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八百長は当たり前に存在するシステム

 2010年に発覚した大相撲野球賭博問題。現役力士だけでなく親方など大相撲の複数の関係者が暴力団を胴元とする野球賭博に関わっていたとして、大きく報道された。

 そして翌2011年2月、その調査の過程で「大相撲八百長問題」が発覚する。この八百長に関与した力士23人が引退等の処分を受けた。クビになった人間はその後、コツコツ真面目にやって社会復帰する者もいれば、そのままズルズルと地獄まで落ちていくような者もいる。

 八百長をした本人が悪いと言ってしまえばそれまでだが、全てはこの業界にある八百長というシステムのせいである。私が現役の頃は8割から9割の人間が八百長に関与していた。そのくらい、当たり前に存在するシステムなのである。

 そんな中、ただ一人悪者にされた春日錦(かすがにしき)の無念をここで晴らしたい。

東京・両国国技館で北桜をすくい投げで破った春日錦(上) ©時事通信社

断髪式は一連の不祥事を受けて事実上中止に

 春日錦は野球賭博に関与したことにより謹慎処分を受け、2011年1月場所13日目終了後に引退を表明した。引退後は年寄・22代竹縄(たけなわ)を襲名し、春日野部屋の部屋付き親方として後進の指導に当たる予定だった。

 しかし、引退直後の2011年2月に発覚した八百長問題において、八百長に関与していた力士の黒幕として春日錦の名前が挙がったのだ。このとき、調査に対して八百長を認めなかった力士は相撲協会から引退勧告を受けたが、春日錦は関与を認め、その後も調査に協力したことによって、同年4月1日に職務停止2年という処分が下った。