しかし、春日錦は処分の如何にかかわらず、すでに相撲協会を退職することを決めていた。同年4月5日に相撲協会は春日錦(22代竹縄)の退職届を受理した。
引退した力士は大銀杏を切る断髪式を行うしきたりである。しかし、春日錦にはそれも許されなかった。5月に予定されていた断髪式は一連の不祥事を受けて事実上中止となり、師匠には「勝手に切れ」と切り捨てられたという。
見つかった「八百長についての録音テープ」
このような話は私の耳にも入って来た。しかし、今考えると可哀そうだなという気持ちのほうが強い。
そう思うのは10年の時を経て、2021年に春日錦のお姉さんから連絡をもらったからだ。
「八百長のことを話す録音テープが見つかりました。他にもいろんな話が入っているテープがあり、これを役に立ててほしい」と。
とても驚いたと同時に、「それなら、なぜ春日錦本人が来ないんだ?」と不思議に思い聞いてみると、警察発表では1年前の2020年に自死を図ったという。非常に残念な話だ。
死の真相は知る由もないが、ここに春日錦の無念を晴らすため、10年前のテープの内容を記載することにする。なお、ここでは読みやすさを考慮して実際のテープの内容から文言を一部変更している。実際の音声は私のYouTube チャンネル「貴闘力部屋~相撲再生計画~」にて公開しているので、そちらを当たっていただきたい。
唯一の物証は春日錦が使用していた携帯のメール
【2014年新聞取材に応じる春日錦の姉と新聞記者の会話】
記者「これは私の考えから言うと、取材の結果として私が認定しているのが次のようなことです。想像の部分と取材の事実を分けてお話ください」
姉「分かりました」
記者「まずですね、取材している中で聞こえてくる事実関係としては、今現在……というか、2年前から春日錦が黒幕である、と」
姉「そうですね、言われてますね」
記者「というのも、結局、野球賭博を経て出てきた唯一の物証が彼(注:春日錦)の携帯電話のメール記録であると」
姉「はい」