八百長、賭博、かわいがり、裏社会とのつながり……。元関脇・貴闘力が角界のタブーに切り込んだ書籍『大相撲土俵裏―八百長、野球賭博、裏社会…相撲界の闇をぶっちゃける』(彩図社)が発売より好評を博している。
15歳で元大関・貴ノ花の藤島部屋に入門し関脇まで上り詰めるも、2002年9月場所で現役を引退。自身も現役時代に賭博に手を染めた経験がある貴闘力が10年の沈黙を破って明かした相撲界の悪しき風習。その告発の一部を抜粋し、転載する(転載にあたり一部編集しています。年齢・肩書等は取材当時のまま)。
(全6回の4回目)
◆◆◆
野球賭博のシステムとは
2010年、私は野球賭博に関与したことが原因で相撲協会をクビになった。クビになったことを今さらどうこう言うつもりはない。私なりにこの10年で自分のしたことを誠心誠意反省してきた。
そこで、みなさんにはこの野球賭博の真実をここでお伝えしたい。どういう構造になっているのか、なぜ相撲界と野球賭博が切り離せないのか。考える一助になればと思う。
まずは野球賭博のシステムについて。相撲界の野球賭博には「胴元」と「張子(はりこ)」と「中継(なかつぎ)」がいる。胴元は賭博の元締め、張子はお金を賭ける人物のこと、そして中継が賭け金を集めて配分する人物だ。力士が賭博に参加するには「中継」にお金を張ることになる。
この中継役が反社の人間だと誤解されている方が多いが、反社なのは胴元であって、中継は相撲あがりのカタギの人間が務めていることが多い。働きながら小遣いを稼ぐような感覚の人間たちだ。
500万勝ったことが原因で事態は一転
事実として、野球賭博は私を含め相撲界でたくさんの人が関与していた。なかでもあの野球賭博の一件で矢面に立ったのが当時の大関・琴光喜(ことみつき)だ。私と琴光喜だけがこの賭博問題でクビに追い込まれた。
琴光喜は中継にお金を預けている張子だった。琴光喜は賭けに勝ってもお金を戻してもらえず、負けた時はそのままお金を持っていかれている状態だった。野球賭博の「や」の字も知らないのだ。
当時の私も大事件に発展するとは思っておらず、相撲界の内側でのことだから大丈夫だろうと安易な気持ちでいたのは確かだ。
しかし、ある日を境に事態は一転する。それは私が野球賭博で500万円も勝ってしまったことが原因であった。