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《野球賭博で角界追放》「話が明るみに出ましたわ。もう、終わりました」貴闘力が告白する“人生が終わった瞬間”と琴光喜への懺悔

『大相撲土俵裏―八百長、野球賭博、裏社会…相撲界の闇をぶっちゃける』#4

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貴闘力が琴光喜に配当金の回収を依頼

 私は琴光喜に配当金の回収を依頼していた。私は当時、琴光喜にお金を借りていたにもかかわらず、どうしてもその勝った500万円が欲しかったので、なんとか都合をつけてくれないかと頼んだ。

 500万円はまだ琴光喜本人の手元になく中継の人間のところにあったので、琴光喜が中継の人間に「貴闘力がそう言っているから月曜日につけてくれないか」と話してくれたようだが、中継には断られてしまった。

 中継はただお金を集めて配分するだけではない。勝ったときは勝った分の1割が手数料として中継の元に入り、負けた時は賭けたお金がそのまま中継の元に入る。つまり、自分たちのような力士が20人いたら、1年で何千万かのお金は儲かるわけだ。

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 今回私が勝った500万円はたしかに小さい額ではないが、中継の人間がこういうときのためにお金を残しておけば払えない額ではない。

 しかしそんなことはしない。私たち力士の立場は、いざ賭博で不利益を被ろうとも何も言えない人間だからである。週刊誌に叩かれたら自分の立場が危うくなる人間は、「金を返せ」と強要するわけにもいかない。

 真偽のほどは定かではないが、中継の人間は「八角理事長の所の力士に200万貸していて手元に金がないから返せない」と言い要求を突っぱねた。さらに、他の元力士にも貸しているなど、他の力士の借金を理由に支払いを拒否した。

 話はこれだけで終わらなかった。

“難癖”の矛先が琴光喜に向いてしまった原因

 ある力士が「俺は金など借りてない! なのに返せとは何事だ。迷惑料として300万円払え!」と言ってきたのである。この事件をきっかけに野球賭博問題が世間に明るみになったというのが真相だ。最初のきっかけを作ったのは私であることに間違いはない。

 その力士は胴元でもない中継でもない一般の客(張子)である。難癖の矛先は琴光喜に向けられた。私は琴光喜に「そんなの相手にしなくていい。払わなくていいよ」と言ったのだが、琴光喜はそのお金を元力士に払ってしまった。

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