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《野球賭博で角界追放》「話が明るみに出ましたわ。もう、終わりました」貴闘力が告白する“人生が終わった瞬間”と琴光喜への懺悔

『大相撲土俵裏―八百長、野球賭博、裏社会…相撲界の闇をぶっちゃける』#4

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 それも元はと言えばすべて私のせいなのだが、当時の私はお金を払ってしまった琴光喜に腹を立てたことでいざこざが起こり、数か月間お互いに口を利かない状況に陥った。

野球賭博について日本相撲協会の臨時理事会が開かれるホテルに着いた琴光喜関 ©時事通信社

藁にもすがる思いで警察に相談するが…

 それからしばらく経ち、3月場所が始まる頃。その力士は先日琴光喜から300万円とれたことに味を占めて、次は40~50人いる中で1人300万円取れたら1億円になるだろうという思惑で、なんと1億円を吹っかけてきたのだ。

 私たちも当然1億円なんか払いたくはない。他の力士たちとも話し合ったが、責任は私にある。そこで頼ったのが警察だった。「野球賭博の案件よりももっとキツイ案件をこなしてきた人がいるから、相談するといい」と知り合いに教えてもらったので、私は警察に相談しに行くことにした。藁にもすがる思いだった。

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 大阪から東京まで足を運んで、部屋に入ると2人の警察官がいた。話をしていくと、最初は野球賭博のことを話しているのに、彼らは次第にヤクザと相撲界の関係について話を振ってくる。

「○○さんは××組の▲▲さんと知り合いですよね?」という具合だ。

 しかし、そんなこと知るわけがない。野球賭博のことなどそっちのけだ。当初に抱いていた違和感は話し始めて10分過ぎた頃には完全に不信感へと変わった。結局そこからは真剣な話をしなかった。

「親方。終わりましたわ」琴光喜から電話が

 警察は1億円の要求について「警察に言ったと相手に言えば話は終わりますよ」と、さらに「もしそれでも何か言ってきたら、もう1回警察に相談してください」と言うので、その日は帰宅し、吹っ掛けてきた元力士に話をしに行った。

 私は「警察に話したんだ。このままうやむやになったら不問にする」と言われた通りに話すと、向こうも分かってくれて「じゃあ無しにしましょう。この話は私らも一切言いません」と承諾してくれる形で事なきを得た。

 当時の心境は「助かった」、ただその一言に尽きる。力士たちは「野球賭博は怖いから辞めような」と、この件をきっかけに足を洗った。

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