八百長、賭博、かわいがり、裏社会とのつながり……。元関脇・貴闘力が角界のタブーに切り込んだ書籍『大相撲土俵裏―八百長、野球賭博、裏社会…相撲界の闇をぶっちゃける』(彩図社)が発売より好評を博している。
15歳で元大関・貴ノ花の藤島部屋に入門し関脇まで上り詰めるも、2002年9月場所で現役を引退。自身も現役時代に賭博に手を染めた経験がある貴闘力が10年の沈黙を破って明かした相撲界の悪しき風習。その告発の一部を抜粋し、転載する(転載にあたり一部編集しています。年齢・肩書等は取材当時のまま)。
(全6回の3回目)
◆◆◆
使えないやつがいたら連帯責任
私が藤島部屋に中3で入った時、悪い先輩がたくさんいた。
なかでも一番悪かったのはWである。入門した新弟子に「いじめ免除券」というものを一場所3万円で配っていたのだ。つまり、これを買わないといじめられるということだ。私は田舎から相撲部屋に入るときに周囲の人が餞別として5000円や1万円をくれたので、20万円くらいまとまったお金を持っていた。
すると、どこから聞きつけたのかWは「あんちゃん、親方にお金預けてないの?」と聞いてくる。まだ預けてないですと答えたら「明日返すから貸しといて」と言うので、若かった私は有り金20万円を全て渡した。
しかし、どれだけ経っても貸したお金は返ってこない。3カ月ぐらい経った頃に「すみません、そろそろ」と私が言うと、いきなりスコップを持ってきて「お前は俺に恥をかかせるのか」とスコップで突かれて血だらけになった。 当時の私の給金は2カ月で6万円ぽっち。そのうえいじめ免除券で3万円も取られるし、先輩から用事を頼まれるとすべて自腹。金を取られるだけでなく、ケーキ屋でケーキをもらってこさせられたり、4時になったらパチンコ屋で始まる抽選に走って行かされたりすることも。その席で1カ月間当たらないことが続こうものなら、「お前はツキがねえんだ」と叩かれることもあった。