地獄の新弟子生活3年「毎回ケツをシバかれた」
新弟子の時に新宿のディスコ「NEWYORK NEWYORK」が流行した。そこへ先輩たちが行くとなれば、当然ついて行かねばならない。店まで行くのに先輩たちは自転車、私たちは中野新橋から新宿までダッシュ。さらに先輩たちの分までお金を払うのはもちろん私たちだ。5000円くらいしか手持ちのお金はないが、特定の時間に行くと1000円で入り放題かつ、ご飯食べ放題となるのでその時間を狙って行く。こっちが払っているのに「好きなもの食え」と言われて「ごっちゃんです」と頭を下げるようなこともあった。22時になったら部屋の鍵が閉まるので、新宿からダッシュで帰る。帰りも先輩たちはチャリンコ。こんな地獄の生活が3年も続いた。
一人使えないやつがいたら、連帯責任としてみんなで毎回ケツをシバかれた。叩かれるときに当たる瞬間ギリギリで逃げると痛みが半減するといった、どこの社会でも活用できないテクニックも身についた。叩かれる瞬間にギリギリで飛び上がり、痛い感じを演出するのがコツである。
「相撲部屋の住み込みはヤクザの部屋住みより過酷」
もっとひどかった力士もいる。
たまたま先輩の用事でパンツを買いに行かされたことがあった。場所の初日か2日目あたりで、力士仲間の母親が地元から訪れていて、若い衆が何人かご飯に誘ってもらい、帰るのが遅くなった。しかしそれをみんなで口裏を合わせて「用事で帰るのが遅くなった」ことにしようとなったのだが、一人が先輩に「正直に言わないとぶっ殺すぞ」と凄まれ、「すみません、ご飯食べてきました」と白状してしまった。
そうなれば、全員両手両足を縛られて尻をすりこぎで叩かれた。叩かれると最初は赤くなり、次第に青くなって最後には皮がパンと弾ける。するとミミズ腫れのようになり、皮が全部剥がれる。翌日も相撲があったが痛くて座れないし、普段履いているパンツのサイズでは収まらないほど腫れるのだ。審判部で座っていた元横綱の輪島さんに「お前藤島んとこの弟子か? いい色してんな」と言われたこともある。昔はケツの色で力士の部屋が分かったのだ。ヤクザの部屋住みも過酷らしいが、相撲部屋はそれ以上かもしれない。
新弟子のうちはスケジュールも過酷だ。
まず、朝は必ず4時に起床。寝坊をするとシバかれるが、目覚ましを鳴らしすぎても怒られる。そこから歯を磨いて4時15分ぐらいに稽古場に降りなければならない。