『君の名は。』『キングダム』『マスカレード・ホテル』『銀魂』『シン・ウルトラマン』『コンフィデンスマンJP』。日本映画の興行収入ランキングで上位を占め、あるいは話題を集めた作品の出演者名に、驚くような確率で「長澤まさみ」の名前がクレジットされている。
ブロックバスター級映画の興行収入や話題だけではない。『MOTHER マザー』や『散歩する侵略者』などの映画に出演すれば、本来なら大衆受けしないテーマの作品の興行を支え、同時にその演技力に対していくつもの映画賞が贈られる。
日本を舞台にした中国映画『唐人街探偵 東京MISSION』では、彼女が物語のキーになるヒロインをつとめた。中国大陸で公開6日間で、日本円にして数百億円の興行収入を上げ、中国市場での『アベンジャーズ エンドゲーム』の記録を超える歴代6位に位置する作品だ。数千万人の中国観客が見た人気シリーズの日本編ヒロインに彼女が選ばれたのは、日本映画界の切り札、日本映画代表の中核メンバーとして誰もが長澤まさみを認めているからに他ならない。
なぜ長澤は『エルピス』を選んだのか
『エルピス —希望、あるいは災い—』の脚本家、渡辺あやが文春オンラインの取材に対して語った「(主人公の配役は)即決で長澤まさみさんがいいと決まりました」「この役は彼女しか考えられない」という言葉は、ドラマを見る誰もが納得できることだろう。ここまで放送された前半でも、長澤まさみは複雑で繊細な物語の導入に視聴者を強く惹きつける演技を見せている。
だがあえて言うなら、日本のドラマの配役会議で「この作品に長澤まさみが出てくれたら」と願わない脚本家やプロデューサーの方が少ないとさえ言える。「渡辺あやがなぜ長澤まさみを選んだのか」と同じくらい、三谷幸喜の大河ドラマナレーションから野田秀樹の舞台まで出演に忙殺される長澤まさみが、なぜ渡辺あや作品を選んだのかは興味深い点だ。
それも渡辺あやのインタビューによれば「オファーしたら、即答で『やります』とお返事をくださいました。さらに、企画がストップした数年の間もずっと待っていてくださって。すごく嬉しかったですし、私たちにとって希望でした」と語るほどの熱意で『エルピス』への出演を優先してきたのか、は重要な点になる。